揺るがない幸せと赤い糸


こう言えばハルみたいに思うかもしれないけど………雪が、欲しい。

そう思うようになったのは、いつ頃からだろう。そう思うようになって以来、私は雪が降るたびに灰色の空に手を伸ばす。

今日、ようやく初雪が降った。積もるほどもない粉雪が、ふわりふわりと舞っている。惹かれるように空へ手を伸ばした。

冬になっても私とは反対に、ハルは無性に水が恋しいみたいだ。


「またやってるのか?」

背後から声をかけてきたのは、恋人のハルだった。ハルとは生まれた時間ぶん友人で、私のことは何でも知っている。


若葉に露が溜まる寒い朝も、真っ直ぐな日差しが照りつける暑い昼も、日が落ち窓から見える空が曇る夕暮れも、暗闇迫る深い冷たい夜も、比較的涼しい春も秋も、ハルが大好きなあの情熱の夏も、休むことなく降り続く雪の冬だって、時代が作ったボタン一つでかけられる携帯電話と、メールが示すように共有できる時間、暇さえがあればいつでも一緒だった。


携帯電話やパソコンなどハルはあまり使わないので正確には直にあっている時間の方が多い。

そんなハルを私は微笑みながら見つめた。

「なかなか捕まってくれないよ」
「そんなに雪が好きなのか」
「うん、ハルが水を好きなのと同じくらいに好き」

こう言えばきっと分かりやすくて共感してもらえるだろう。

雪は簡単には捕まってくれないけど、ハルは簡単に掴むことができる。思い切り抱きしめても消えない。その実感が欲しくて、私は何も言わずにハルの腰元に抱きついた。

「ハルは強く抱きしめてもいなくならないから、もっともっと好き」


柄にもないセリフを言っても、雪の寒さのせいか感覚が麻痺して恥ずかしさよりも寧ろ清々しさを覚えた。そんなハルも無言で私の背中に手を回した。

そして甘えるように肩に頭を乗せて、更に抱きしめる力を強めた。

馬鹿みたいにおろおろしだしたハルがおかしくて、私は密かに吹き出した。
ハルはそんな私に少しばかり赤くした顔を見せた後、照れくさそうに私の肩に顔を埋めた。


ハルは知らない。

さっきハルの表情は雪に映えて、それはもう幻想的だったことを。
白く舞う雪も、それに映える紅も、美しいと思うならばただただ美しいということを――。

単語
嫉妬、雪