君と僕のちっぽけな幸福


「キミ、バレー部のマネやってみない?」

不敵な笑みを浮かべた目の前の高身長のトサカヘッドさんが、その言葉を私に向けていた。

私がトサカヘッドさんと話すことになったきっかけは、今朝の友人との会話にあった。

「黒尾先輩ってカッコいいよねー…!」
「分かる!確かバレー部のキャプテンだったよね?」
「そうそう!この前ちょっとだけ練習風景見たんだけど凄くカッコよかった」

友達のそんな会話が耳に入った。クロオ先輩?最近一年生の女子の間でよく聞く単語。単語というより人名か。そのクロオさんって人はどうやらバレー部のキャンプテンで、なかなかのイケメンさんらしい…?そこあたりの話は良く聞いていなかったので断定はできない。

「ねぇ名前はどう思う?」
「うん!カツ丼は美味しいと思うよ」
「そんなこと聞いてないんだけど!そうじゃなくて、黒尾先輩のことどう思うかって話」
「クロオ先輩って…、どなた?」
「えぇ、バレー部の部活動紹介してた人だよ!」

大ピンチ!その部活動紹介の時、隣の友達と話していてあまり良く見ていなかった。これじゃあ話に乗り遅れてしまうではないか。

「クロオ先輩…。んー、カッコいい、んだよね?」
「あぁ、顔覚えてないか…。」
「うん…。でもちょっとだけ興味湧いてきたよ!」

友人がクロオ先輩について熱弁するため、少しばかり興味が出てきた。イケメンであれば少しは見てみたいという気持ちが芽生えるのは当たり前のことだろう。そう思って私は友人を誘って、バレー部の練習場所である体育館に一緒に行こうと考えたわけだが、用事があるとかなんとかで先に帰ってしまった。それで私は一人でバレー部の練習場所に行ったわけだけど。

練習風景を外から覗いていた時、話しかけてきてくれたのが、少し汗をかいたトサカヘッドさんだった。

そして話は冒頭に戻る。

「どう、バレー部のマネージャー」
「いえいえ、滅相もございません!私が役に立てるとも思いませんし……!」

それにクロオ先輩のことを好きな友人に怒られてしまいそう。でも、友人曰くクロオ先輩のことは遠くから見つめるだけで十分と言っていたし……いいのかなぁ?というかクロオ先輩ってどの人だろう。

「まぁまぁ、じゃあ取り敢えず中で練習風景とか見ていってよ」
「……はい」

幸い、体育館を覗いている女子はおらず、体育館の中にいるのは私だけという奇跡な状況だ。このチャンスを逃していつ間近で見るんだ。なんかちょっと趣旨が変わってしまった気がするけど、大人しく見ていよう。

そう思って隅っこに腰を下ろした時だった。

バァン!

音を立ててトサカヘッドさんの打ったボールが反対コートに落ちていった。

カッコイイ…………!!打った後のドヤ顔も、すべてひっくるめてカッコイイと思ってしまった。

どうやらこれは入部決定になりそうです…!

そのカッコイイと思ってしまったトサカヘッドさんがクロオ先輩だと知るのはもう少し後の話。


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勧誘、入部