季節は厳しく優しく


最初は、ただの粉雪だった。

凛と張った空気の中、まるでそれを意に介さぬかのように柔らかに舞う雪にふと意識を搦め取られたのだ。所々に触れては消えるその儚さを、私は儚いなぁと切り捨て目を逸らした。

次に見上げた時には、ふわふわと薄く路上に溜まっていた。
ちらりと覗くアスファルトに、なんとも風情のないことだと嘆息したのを、今でもはっきり覚えている。白に染まりゆく世界で大きな口を開ける黒に、底知れぬ闇を見て馬鹿らしくも震え上がった。

まだ来ない彼の影を探して、もう一度白い息をはいた。そして白い息の行方を追っていると、視界に人の姿を確認した。

「影山君…!部活もう終わったの?」
「あぁ、月島ならもう直ぐ来るんじゃねーか」
「そっか、ありがとう。」

姿の正体は紛れもない影山君で、私とお付き合いしている月島君と同じ部活である。何度か雑談したことがあり、バレーに対して真摯に向き合っている人だという印象を抱いている。どこか月島君とは対称的で違う新鮮味がある。

「何してんの二人で…。」

すると早くも不機嫌な月島君が登場した。今日は一段と機嫌が悪くてこれは大変になりそうだなと心の中で苦笑いした。

「少し影山君とお話ししてたの」
「ふぅん…、まぁいいケド。…帰るよ」

自分が何をして怒らせたのかは、分からない。ぷいっと背を向けて、再び押し黙った月島君の姿がまるで別人のようだ。今は、全身で私を拒絶しているように思える。

いつもの大きい背中からは何も感じられなくて、拒絶されたどうしようもない不安と孤独感が押し寄せてきた。

嫌われたのかな。何をしちゃったのかな。触れたい彼の手も、今は握ることさえも途絶される気がして。ついには声が漏れ出した。

「ご、ごめ……!月島く…私何かしたかな…?」

うるうるしてボヤける視界に月島君の姿だけがハッキリ見えている気がする。

「今のは…、ただの嫉妬」
「…え?」
「あー、本当めんどくさい………。」

月島君は綺麗で長い人差し指で、私の目から溢れる滴を掬った。いつになく素直な蛍君に心底驚きながらも、正直に"嫉妬"だと言ってくれたことが嬉しくてついつい笑みが零れた。月島君が私をちゃんと好きでいてくれると初めて実感した。これほど嬉しいことは今までにあっただろうか。

「名前の事、ちゃんと好きだって言ってるの」

すっかり闇に包まれた空に、雪が降り積もっている。ひらひらと舞い降りる雪片がぼんやりと浮かぶ月の光を反射してきらきら光っていた。その雪に降られた私たちの頬は心なしか赤く染まっていた。

きっと雪は人の心を豊かにしてくれるものだと、そう感じた。


単語
嫉妬、雪