不釣り合いロマンチスト
私と真琴君が不釣り合いなことくらい分かってる。
カッコいいし優しいし運動はできるし…。頭はよく分からないけどいいと聞いたことがある。
いわば完璧な人。
真琴君に比べて私は臆病者だし、運動はそこそこだし。
容姿だって隣の席の子の方が何倍も可愛い。いわゆる平々凡々な人なんだ。
だからちょっとした事であっという間に真琴君を好きになってしまった。なんというか、命の恩人と表現した方が言葉がピッタリだろう。
きっかけは、中学校で私がプールで溺れた時に助けてくれたこと。
みんながプールから上がろうとしていた時、私は足がつってしまって身動きが取れなかった。
必死にもがいていたけど、先生は生徒と話しているし、他の生徒はタオルを取りに行ったし誰も気がついてはくれなかった。叫ぼうと思ったけど力が抜けて声が出ない。
さすがにもう駄目だと思ったら、綺麗なフォームで水に飛び込み私の方まで高速で泳いできた人物がいた。それが真琴君だったというわけだ。
それ以来、自然と目で追うようになって、同じ高校まで追いかけてきて。つまりはしばらく片思いしているということだ。
真琴君の方は私に見向きもしていないことくらい分かっている。だから、真琴君が好きな人と一緒にいれたらそれでいいかな、なんて綺麗事を並べたりしてみる。相手が自分だったら尚更いいななんて妄想してみたり。
「真琴君って、なんであんなに完璧なんだろう…。」
教室のいすに座ってため息を漏らした。
放課後の無人の教室は、驚くほどに涼しい。
宿題もここだったらはかどるだろうと思って、こうやって居残りしているのだ。
こんなことを呟いたって一人で虚しくなるだけなのに。
「俺は完璧じゃないよ。」
それは教室の後ろの方からだった。
声が聞こえたのと同時に振り向くと、まだ髪の毛が濡れていた真琴君がいた。
水泳部は外が完璧に暗くなる前には練習を辞めるようだ。
「ごめんね、急に。忘れ物を取りにきたんだ。」
私は一生懸命首をふるふると横に振った。
「いや、真琴君は…完璧な人…だよ!」
真琴君と話すのに免疫がないので途切れ途切れになりながらも、全ての言葉を言い切った。
すると、スタスタとこちらに歩いてきた。
「ううん。だって、好きな子が目の前にいるだけどこんなに心臓が早く動くんだよ…。」
赤面しながら私の腕をつかんで自分の胸に寄せた。
真琴君に掴まれている部分が熱くて仕方が無い。
対して、真琴君の心臓も、服の上からでも分かるくらいに早く動いていた。
「好きな子って…。」
「うん、苗字さんだよ。」
今日はなんて幸せな日だったんだろう。
これは夢なんじゃないか…。