夢現と共に安らかな幸福を
「急に珍しいね、話があるなんて」
ゆっくりとその端正な顔が私を見つめてどこまでも澄み切ったグレーの瞳に自分が映る。睫毛が長い、なんて思ったけれどレギュラスの真剣な瞳といつもはすべてを隠しているはずのポーカーフェイスが今日はなぜだか少しだけ苦しそうに見えたので何も言わないでおいた。
「いえ、特に際立って大事というわけではないんですけど」
レギュラスは私をじっと見つめてそしてしばらく考えた後に小さく言った。
「もしもの話。僕が死んでも、強く生きてくださいね」
普段の私であれば笑って冗談だと思うであろうその言葉は、まるで彼が明日にでもいなくなるような言い方に聞こえた。そう、死に行く最後の言葉のようなそんな重みを出していた。
そう考えると、明日にでも彼が消えてしまうのではないかという恐怖が身体中を駆け巡った。
「…死ぬ、なんていや。…レギュラスが死ぬんだったら私も一緒に死ぬ」
「それは、絶対に許しません」
「じゃあレギュラスが死ななきゃいい…!」
彼は何か重い罪を隠している。独りで懺悔することもできない暗い闇を抱えている。確信ではないがそう感じていた。きっとレギュラスはたった独りで戦っている。ちっぽけな私の存在では踏み込めないほどの闇を抱えている。
「…今のはもしもの話ですから、変なことを聞いてしまってすみません」
レギュラスはっきりと悲しいと表情に出す。卑怯者な彼は、自分がそんな顔をしたら私は自分を曲げざるを得ないと知っているのだ。惚れた弱みという奴だ。
もし彼に一緒に死のうと言われたらまんまと一緒に逝ってしまうのが今の私だ。それくらい彼の存在がこの人生の中で大きくなっていた。
「…レギュラス、何があっても死なないで」
「名前を愛する気持ちは、永遠に変わらない。──たとえ、名前が僕じゃない誰かと一緒になるとしても。…これが嘘偽りのない僕の気持ちです」
彼は私の問いに"はい"とは言わなかった。私も正直な話、レギュラス以外を愛することなんてできないだろう。今後何があっても彼を愛し続ける。心の中でもそう決めていた。
「ありがとう。私もレギュラスさえいれば何もいらない。」
もし地位も名誉も全てを投げ打ってまでしても彼と一緒にいる選択をするだろう。
大好き、大好き……、永遠に愛してる。
その言葉の重みは重々に理解している。簡単に好きだとか嫌いだとか言うのは何も思っていない証拠。言葉の重みを知った時、人は初めて自分以外の人を愛することができると思うの。
だから、死ぬ最後の最後まで、あなたと共に居させてください。
それが私の些細な願い事。
単語
切甘、恋人