ピーーーーーーーーッ。
心配停止の機械音。
俺が病院に駆けつけた頃には、既に名前の顔には白い布が被さっていた。さっきまで名前と話していたのが嘘のように感じる。
これは名前の選んだ道。俺が口を出していいことじゃなかったし。
…でもやっぱり辛いよ。
名前は置いていかれる側の気持ちを考えたことはあるだろうか。最後の最後まで、触れることが出来なかった。抱きしめてあげることも出来なかった。けど、名前が最後に見せてくれたのは今までで一番の泣き笑いだった。それがあまりにも綺麗だったから、その時ばかりは彼女が本当の天使に見えた。
人によって想いの大きさが違う。
それにより傷つく事もある。時には癒される事もある。その一つ一つが心を成長させていくのだと俺は思う。それぞれが鍵となり閉ざされた心の扉を開き、いつか闇から開放してくれるはずだ。
名前が俺にくれた言葉の数々ように。
「ありがとう…。」
だから俺は最高の感謝を君に伝える。
何処へ行っても俺の声が届くように必死に祈るよ。名前の幸せを。
***
「孝支さん、とても素敵な方ですね」
いつの間にか直ぐそばに立っていたリリルが呟く。
『当然だよ。私が大好きな人だもの』
涙を堪えながら、涙声で言い返した私をリリルは優しく見つめた。
私がいなくても孝支君はきっと一人で元の孝支君に戻れる。悲しみの中に、ほんの少し希望のかけらが舞い降りた気がした。これで一つ、また一つと未練は薄れていく。
『……あれ?あれれ?なんでかな?』
気づいた頃には私の両目から生暖かい何かが地に向かって降り注いでいた。
とたんに、押しつぶされそうなほどの膨大な量の感情が私の中に流れ込む。
過去や現在、未来への想い。
不安や絶望、反対に希望や願い。
誰かに対する想いも同じ?
思わず、その感情に飲み込まれそうになる。
「誰にだって決断が揺らぐことはありますよ。でもそんな時こそ心を強くもちましょう?」
リリルが綺麗な目をこちらに向けながら語る。その純粋な目が私を希望の光へと導くの。
『そうだね、ありがとう。…ねぇ、リリル。』
「なんでしょうか?」
『貴方がいてくれて本当に良かった』
「………っ。」
そばにあった笑顔が、優しい言葉が、温かいぬくもりが、私の傷ついた心を癒してくれた。それは、感謝しても感謝しきれないほどに私を満たしてくれた。
「…では、そろそろ行きましょうか。天国へ。」
『うん。』
ありがとう、みんな。
そしてどうかお元気で。さようなら…。