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君へ謝罪と後悔
決断日まで残り二日となった。

昨日の病室での出来事があってから、私はそのまま気を失ってしまったらしい。現世への未練が強すぎて、強制的に呼び戻されて、再びあの真っ白な世界へとやってきた。こんな時取り乱してどうするの。ちゃんと選択して、自分の道を進まなければならないでしょう。

そのためにまずは精神を落ち着かせなきゃいけない。そう思って深く深呼吸をした。

その時、私は疑問に思った。

ただでさえ生きている心地がしないのに、私は呼吸をしている。それが不思議でたまらない。同時に怖くてたまらない。

いつ死んでもおかしくない状態の中で、リリルと私のたった二人ぼっちの世界。独りぼっちよりは二人の方が断然いい。だから文句も言わずに一緒にいてくれるリリルには感謝をしている。これも天使の仕事だと言われたらそこまでだが、本当に感謝をしている。

「今日も地上に行きますか?」
『行きたい』

私は即答した。行って確かめたいことが山ほどある。

私たちは今日も下界の病院へと向かった。やはり母は目の下に隈を作りながら私を見ている。ごめんね、お母さん。見守ってくれてるんだよね。

ちゃんと生きてるときはあんな素っ気ない態度とってたけど、本当はお母さんのこと大好きなんだよ。仕事で病院に来られないお父さんの事だって大好き。本当は誰よりも病室に来たいのに、仕事が仕事だから来られない事も知ってる。


___地上の天気は晴れ。

完璧な快晴とは言えないが、美しい青が雲の隙間から顔を覗かせている。普段は美しいと思わないその色も、暗い気持ちの私には、何よりも明るく澄んで見えた。こんな色を今まで何度見てきただろうか。天界からでも美しい空を見ることができるだろうか。

「…こんにちは」

私が空を見上げていると、カーテンを開けたのは見知らぬ誰か。けどどことなく知り合いの面影がある。どこで見たのかは覚えていないけど。ただ、その人を見た瞬間のお母さんの顔は、少し困ったようだった。

「こんにちは。今日も来てくださったんですね」
「あの…少しいいですか?場所を変えて話したいのですが。」
「はい、もちろんです」

相手方の女性は、本来の姿ではないだろう窶した(やつした)顔を俯かせながら話す。言われるがままに私の病室を後にする二人。私以外誰もいないその病室は、やけに広く見えた。

私は追いかけようとするけど、ここから離れたくない…。また誰か私の様子を見に来てくれる気がして。

『どうすればいいかな…。』
「でしたら、特別に私が見ている映像も貴方の脳に映し出しましょう。」

リリルには何でもお見通しのようで、私の考えていることはすぐ分かってしまうようだ。天使にはそういった役目もあるのだろう。

『それってどういうこと?』
「はい。つまり、私が貴方のお母様達に着いて行きます。そして、そのお二方の様子を名前さんの脳にテレパシーを送って、見ることが出来るようにするんです。」

それは名案だ。つくづく有能な天使さんである。彼女がいなければ、グズグズしていて、泣いてばかりだっただろう。

『それ、お願いしてもいい?』
「もちろんです!では、行ってまいります」

リリルは天使らしく優しく微笑んで、病室を後にした。

***

リリルからの映像は鮮明に映し出された。私は目をつむって意識を集中させる。

「すみませんでした…!私の不注意で、こんな事に。」

どうやら話の流れからすると、この人は私が助けたであろう少女のお母さんで。少女の母は、病院のお話ができる空間で、静かに、でも心の篭った謝罪を述べた。割と周りがガヤガヤしているおかげか、誰もこの二人のやり取りには気づいていないようだった。

「先日も言いましたが、許すのは私ではなくあの子です。だから今は、あの子の無事を祈ってあげてはくれませんか?」


お母さんは誰よりも怒鳴り散らして怒りたいはずだ。そうしないのも全て私のため。私が間違った選択をしていないと思っているから、私を信じてくれているのだ。

「はいっ………!」

相手方の女性はポロリポロリと涙を流す。誰もその涙を拭って上げることはできない。

私、あなたの子供を救って後悔はしていません。
だからそんなに泣かないでください。

少女の母親の様子を見て、また現世に悔いができた。きっと私が死んでしまったら一生の傷を追う。そんな事は望んでいない。


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