大地君が来てから、約1時間後。
バレー部の皆がやってきた。それと同時に壁に寄りかかって眠っていた孝支君が静かに起きた。
戻ってきた母は、バレー部の皆が訪問してくれたことを知り、また休憩所へ行った。
皆と言っても、田中君やノヤ君、縁下君に山口君、そして日向君だ。他のメンバーは予定がどうしてもあわなくて来れなかったらしい。
いいよ、十分だよ。…十分みんなの気持ちは伝わったよ。だから、みんなして同じ風にそんな悲しそうな表情しないで。そんな表情をさせたくて女の子を助けた訳じゃないの。
女の子助けたんだって?すごいな!って誉めてよ。そしたら私の心だって少しは晴れるからさ。
ほら、田中君とノヤ君はいつもみたいに馬鹿やっててよ。それを皆で温かい目で見守って、たまに大地君が怒ったりして。
楽しかったなぁ…、あの頃は。願うならもう一度、もう一度だけあの頃に戻りたい。
あの頃を思い出すと思い出が溢れてきて、堪らなくなって、私はみんなの背中に語りかける。呟いた声は空気に溶けて音にならない。叫ぼうとしても、それを許さないのは、誰かの悪戯だろうか。
沢山の汗をかきながら、練習をした季節。
最後は笑って泣いて過ごした最後の大会。
潔子ちゃんと沢山話したり、年下の谷地ちゃんを可愛がったり色々あった。
蘇るのはみんなの泣き笑い。あの頃に戻りたいと思わせてくれるのは、沢山の言葉、思い出。
高校に入ってからの出来事が、頭の中を駆け足で通り過ぎていく。
「名前さん、起きないですね…。」
誰が言ったのかよく覚えていない。けどまさにその通り。死んだように眠る私はビクともしない。微かに呼吸こそしているものの、いつ止まるか分からない。
そんな自分を見ているのだけで苦しくなって、時折瞳が潤む。
「でも、今にも起きそうだろ?」
「…そう、ですね」
孝支君が私の青白い頬をそっと撫でる。きっと私が目覚めるのを信じてくれているんだと思う。
その動作一つで瞳に迷いの色を浮かべながら、そっと孝支君の目を見つめた。孝支君はぎゅっと目をつむっている。その様子を喋るでもなく、ただ見つめるメンバー。話しかけないのは彼らなりの優しさだと思う。
しばらくして、やがて彼はゆっくりと瞳を開く。
その目には、何かを決意したような凛とした輝きがあった。私は少し複雑な気持ちで見つめていた。 何故そんな凛とした目をしているのか。
心をよめない私。
本心は彼のみぞ知る。