/繋ぎ止めたい約束/
中二の夏。
ソワソワしながらあの丘に向かう。
そこには彼はもういて、私は笑顔で駆けて行った。彼に先を越されるのはとても珍しい事だ。何時もなら私が先にいて、ボーッとしながら待ってるのに。
彼はまた大きくなっていた。纏う雰囲気も随分大人らしくなっている。完全に子供らしさが抜けているとは言えないけど、十分年上に見える。
会えたよ、また。
彼の優しさに触れる度、募っていく想いが爆発してしまいそうだった。
この想いをどこにぶつければいいんだろう。今はしまっておくしか方法はないのかな。
この頃になると、前みたいに子供っぽい遊びもできなくなっていた。その代わり京治君はバレーボールを丘に持ってきて、私にバレーを教えてくれた。
バレーを教えてくれる彼の表情が生き生きしていて、本当にバレー好きなんだなって感じた。きっとバレーは彼にとって生きがいだ。
中二の冬。
鼻を真っ赤にした京治君が現れた。今年も相変わらずまた手袋をはめていない。
去年と同じように彼の手を包みこめば、反対に包み込まれる。そうして前回と結果は変わりもしないのに手比べが始める。私が京治君を追い越す結果になんてもうならないというのに。
そして別れの際に大きな手を私の頭の上に乗せて告げられた事実。
来年はお互い受験生で会うことはできないと。
しょうがない。大学受験ほど大変ではないが、高校受験だって立派な試験だ。
ましてや京治君は上の高校を狙うだろうし、まだバレーだってある。こっちに来ている暇なんてないよね。
『受験が終わったら、また会えるかな』
ずるい質問だという自覚はある。京治君は私を傷つけるようなことは言わない。きっと会いに来てくれる。私は言葉で彼を縛らなければいけない。
それだけ私たちを繋ぐ関係はそれほど濃くはなかった。
離れている間、私たちを繋いでいるのは希薄な約束。破ろうと思えばいつだって破れる。
「必ず会いに来る」
中学3年はまるまる会えない。つまり、会えない期間は1年に膨れあがっている。
きっとその間に想いはどんどん大きくなっていく。
妙に切なくて、溢れてしまいそうで、抑え切るのが精一杯の恋。
きっと今後でこんな思いをする事はまずないだろう。京治君が大きな存在になりすぎてしまった。
少なからずこの出会いは私を変えた。
彼がいなければ今の私はいないと言っても過言ではない。彼がいなければこんなにも勉強を頑張ろうと思えない。可愛くなろうと思えたのも全部彼のおかげ。
全部彼がいなければ私は成長できなかった。あなたとのふれあいの中で私は私らしく成長できた。そんなあなたを好きにならない道なんてなかった。
でも東京で、京治君をを放っておく女子がいるわけがない。あんなに素敵な人他には知らない。ようするに私はベタ惚れというわけだ。
もし京治君に彼女が出来ても、私に同じように接してくれるだろうか。反対に私は普段通りに接することができるだろうか。
不安でしかたがない。彼女ができたら、彼女を優先するのが普通だろうし、その際にもう会わないなんて言われるかもしれない。
そうでなくとも、私はあなたに会えたこと後悔はしません。
でも、会いたい。寂しいって心が叫んでる。恋する私は厄介なくらいにあなたしか見ていないのです。
駆けっこして、花畑に寝そべったあの頃が懐かしい。昆虫採集や、魚を手づかみしたあの頃が懐かしい。冷たい雪に触れて、冷たい表情を見せた京治君が愛しい。私の中のアルバムは京治君で溢れかえっている。
悲しいくらい鮮明に覚えてる。何も考える必要がなかったあの頃が一番楽しかった。
今はただ苦しいだけの恋。こんな想いをするなら、始めから出会わない方が良かったのかな。叶わない恋だと知っていたとしたら、最初から好きにならずにすんだのかな。
それでもあなたを好きにならずにいられない私の恋心。