/再会の幸福/
高校1年生の冬。
想いが通じあってから時が経った。忘れもしない、私と京治君はちゃんとした絆で繋がっている。
京治君は、今年はいつもより早くにこちらに来ると連絡が来た。私は気持ちが高揚していた。
でも、よりによって。そんな時に…、風邪をひいてしまいました!!
熱が38.4分もあって、おでこを触るといつもの何倍も熱い気がする。若干クラクラして気持ち悪い。
こんなの最悪すぎ…!せっかく京治君に会えるっていうのに。意地でも行く気だけど、京治君にバレちゃいけないから、せめてもの対策としてマスクをして、っと。マスクをマフラーで隠して、…よし、完成!
これで京治君に気付かれることなく、会うことができる。
熱の熱さなんかより、ずっと京治君と会える時間が幸せすぎてニヤニヤしてしまう。
雪道を急いで、何度か滑って転びそうになったけど、なんとか堪えて道を進む。でもやっぱり…転びました。
見事に転んでしまって、余計気分が悪くなった。でも、なんとか行かなきゃ…。大好きな京治君の元に、今すぐ行きたい。
何としてでも京治君に会うんだ。会って、ギュって抱きしめてもらうんだ。
丘へと足を進めると、私が遅すぎたのか京治君は自分の手に息を吹きかけて、そこに佇んでいた。
『ごめん、おまたせ』
「やっと来た」
京治君は優しく微笑んで両手を広げていた。吸い込まれるように、京治君に飛び込むとギュッと抱きしめる。彼は私の胴あたりを上に引き寄せた。
息が止まるほどぎゅっと抱き着いて隙間をなくしていく。
会えた…、会えた。
京治君は私の後ろ髪を梳かしながら私の後ろのマフラーを下に寄せる。でもその下には少し湿ったマスクが存在した。
「なんでマスク?」
『え、っとちょっと風邪ひいちゃって』
京治君は私の言葉を待たずにおでこに手を当てた。今年も相変わらず手袋を嵌めてないんだなぁなんて呑気なことを考えていた。
「…熱があるのになんで来てるんだよ」
京治君が怒ったのを初めて見た。それも怒鳴るような怒りじゃなくて押し殺したような声。それを怖いとは思わなかった。否、思うはずもなかった。それが私を心配しているものだと分かったからだ。
『け、京治君に会いたかったから…。会うの久しぶりなんだよ…?』
単純な理由を述べると、京治君のほとばしりが落ち着いたようで、ほっと胸を撫で下ろした。京治君に会ったら気持ち悪さが吹っ飛んだ。
「ごめん、俺のためだったんだよね」
『…ううん、私のこと心配してくれたんでしょう?ありがとう』
私はより隙間をなくすように抱きついた。キス、したかったなぁ。でも京治君はまだまだ部活があるし、移してしまったら今後の部活に影響を及ぼしてしまう。只でさえ少ない時間を、私のために使ってくれているんだ。我慢するのが彼のため。
『大好き…』
あなたに会ったから自分に素直になれた。あなたを好きになったから私自身を好きになれた。
あの日、この丘で会えたのは偶然が生み出した奇跡だった。できればこの温もりを永遠に独占していたい。私だけのものだと思いたい。
好き。
こんなに好きになった人京治君が初めてだ。
離れたくない。ずっとこのままでいたい。遠距離がこんなに辛いものなんて知らなかった。
「俺も好きだよ」
だけど彼のその言葉だけで今は十分だ。わがままなんて言えない。彼がこうして会いに来てくれること自体奇跡なのだから。これ以上望むならば、贅沢だ。