/安心の追求/
幸せな時間。
それは惜しくも過ぎ去っていく。次にまた会えるのは高校二年生になってからか。遠いな…。
名前には俺の想いは通じているだろうか。
俺の言葉が不器用すぎて伝わっていないんじゃないかと不安になる。だったら冬休みに十分に想いを伝えておけば良かったじゃないか。照れくさいとか言っている場合じゃない。
冬休み明け、放課後女子に呼び出された。
顔を赤くしてたら告白だと思う。
俺に彼女ができたと知っている人は東京では正直誰もいない。名前の方は恐らく知ってる人はいるだろう。この間の祭りで俺たちの姿を見たという彼女の同級生は少なからずいただろうし。俺の方は誰にも言っていないので当たり前だ。言う必要はないと判断したからだ。
要するに俺たちの中だけで知っていればいいという認識だ。
今はSNSというツールがあるが、それだけでは物足りない。会って話したい。この間は名前が風邪をひいていたからキスさえ出来なかった。
悔しいがお互いのことを考えればそれは仕方がない事だった。
俺の頭の中を埋め尽くす名前は、今何をしているのだろうか。
世のカップルの距離感とは違う距離感で成立している恋愛。少し特殊だが、この困難を乗り越えているカップル達だって少なくはない。
遠距離恋愛。
言葉にするとこんなにも短いが、その中には想いはたくさん詰まっている。
名前を好きになったことは少しも後悔していないが、すこし気になることがある。
それは名前の気持ちが別に向いてしまうこと。
こんなに遠い距離で、俺よりももっと近くにいる男に名前の気持ちを持っていかれるのではないかと懸念しているのだ。信頼していないわけではない。
ただ"距離"は恋愛において重要な要素だと思う。
その距離が遠い俺たちは、これからどう乗り越えていけばいいんだろう。せっかく通じたのだ。別れるなんて考えたくない。
呼び出された指定の場所に向かう途中、メールの音が聞こえる。
おもむろに携帯を取り出すと彼女からの着信だった。
珍しかったので不思議に思ったが、メールボタンを押すと
"今日は雨上がりに綺麗な虹が見えました!大きくない?"
と写真と絵文字付きで送られてきた。
なんだ、俺たちは大丈夫じゃないか。彼女の自由奔放な文字を見て心が安らいだ。
彼女が俺を裏切るなんてありえない話だ。そんな日は来ないと分かっている。
仮に彼女が別に好きな人ができたとしても、浮気なんて行為には走らず、正々堂々と向き合ってくれるはずだ。
大丈夫。きっと俺たちは大丈夫だと言い聞かせる他に、安心を求める方法はなかったのだ。