/何時だって貴方が一番/


京治君と別れてから何人かの男の人と付き合ってみたけど、やはり京治君以上の人は現れなくて。早く忘れたいのに忘れられなくて。

ズルズルひきずって大学2年生の中期に至ります。
早く新しい出会いが欲しくて、ムキになって合コンとやら言うものに参加してみた。
しかし心の中は未だに京治君でいっぱいだ。これを未練というんだろう。しつこい女は嫌われるだろう。しかし、連絡もしない私なんて京治君に嫌われて当然だ。それだけの事をした。

彼がバレーをしている生き生きとした姿が好きだ、なんて偽善者ぶった事を思った時期もあった。今もそれは変わっていないが、3年も会っていないとその気持ちは薄れてきた。今となっては元彼で、だけど忘れられない人。

だからこの未練がましい恋に終止符をうつため、無理やり合コンに参加する事になった。

「名前、今日はいい男捕まえようね!」

ハート付きでウインクをかました友達。今回はこの子がセッティングしてくれたらしい。

「でも名前、まだ元彼の事忘れられないんでしょう?名前なんって言ったかな、…えっと"京治君"だよね」

私があまりにもしつこく名前を連発するものだから、一部の友達には覚えられてしまったらしい。

「だいたいね、2年もほったからしにしたのはあっちのせいでしょ?名前が気に病むことなんてないよ!」
『私だって会いに行こうと思えば会いに行けたのに、頑張る彼を応援したいって思って、会いに行かなかったのも悪いんだよ…。本当、変な意地はってた私が馬鹿みたい。』
「これは完全に盲目だわ。ま、今日は"京治君"忘れてパーっと行こう!パーっと!」

完全にテンションを切り替えた友達。こんな暗い気持ちをもった私がいては迷惑だろう。気持ちを切り替えて、合コンに臨もう。


人数は6対6。そこそこの大人数だ。

人数は粗方揃ったが、相手の男子の方は1人まだ来ておらず、取り敢えず時間になったので始める事にした。よく少女漫画的な展開ではここで京治君が来る、とかありそう。

そんな奇跡が起こりうる可能性があるのも変な話だ。京治君が前に行きたいと言っていたそこは、バレーの強豪大学だ。受験を受けるとしたら春高の後だから、推薦を狙っていくと聞いた。彼に関する進学情報はたったのこれだけだ。

………ってなんで私京治君のこと。いけない、いけない、過去の恋愛をひきずる女は嫌われてしまう。結局相手方の1人がこないまま、いろいろ自己紹介をしてからフリータイムになった。

「ね、ちょっと隣いい?」

『はい、どうぞ』

さっそくチャラそうな人に話しかけられております。チャラチャラした人はちょっと苦手なので、若干引き気味で話をしていた。


「名前ちゃん、だよね」

きっとさっきの自己紹介で名前を覚えてくれたのだろう。
………しまった。この人の名前なんだっけ?

『え、あぅ、はい。名前です。』

「俺の名前覚えてる?」

えっと、確か…

『彰人さん…?』
「そうそう。名前ちゃん、ぼーっとしてたからてっきり忘れられてんのかと思ったよ」

その通りでございます!あ、でもちゃんと思い出したから問題はないのかな。原因は100%京治君であることは気づかないでおこう。

『あ、あのちょっと聞いてもいいですか?』
「んー何何」
『今日来るもう1人の方って、いつ頃いらっしゃるんですか?』
「あぁ……あいつならサークル終わってから来るって。そろそろくるんじゃないかな」

『そうですか。ありがとうございます』
「んーいいよー。それよりさ…、」


彼の話を受け流しながらその人を待った。………だめだめだめ京治君の事は忘れるの!

ガラガラ。
頭の中で葛藤していると、その居酒屋の扉は開いた。


「おまたせー」
「おっせーよ」
「わりわり」

……京治君じゃなかった。そんな都合のいい話なんてあるはずがない。……あるはずがないよね。少しでも期待した私、馬鹿みたい。

「俺汗臭くねーかな!?」
「強いて言うなら腕が赤い」

「しょーがねーじゃん!サークル内のエースのスパイク受けてきたんだから!」
「エースって、あの木兎さんとか言う人か」

「そうそう、赤葦とコンビになったあの人のスパイクは打ち返せねーよ」

「ま、立ってねーでとにかく座れよ」

「おお、揃ってんじゃん!」

あか、あし。そうか、京治君のことだ。
京治君、また元気にバレーやってるんだ。それも木兎さんと一緒に。そう思うと自然と笑みがこぼれていた。またあのコンビで頑張ってるんだ。

「あ、今の笑顔ちょーすきなんだけど。ね、もう一回!」
『は、はい?』
「だーから、さっきの笑顔!もう一回見せて!」

あれ、私笑ってた…?

「ばーか。もう一回見せて、って言われたら余計見せづらいだろ。」
「それもそうだな!」

私は頬を両手で包み込んで、何度か揉んだ。頬は知らず知らず火照っていた。
心臓も心なしか早く動いている。

私は今でも京治君しか見ていないんだ。


……どうしてあの時電話に出なかったの?

どうして無理矢理会いに行こうとしなかったの?

自分を攻めるような言葉しか出てこなくて、全身が震えた。
あなたは今何処にいるんだろう。

私ではない誰かと付き合ってるのかな。

キス、してるのかな。
あの優しい抱擁を全身に受けてるの?

飲みかけのジュースを両手でギュッと握った。