/遅すぎる開花/
本当は乗り気じゃなかった。大学に入って2度目の合コン。
友達に誘われて、また合コンに参加する事になった。待てど暮らせど京治君は私の前には現れない。それでいいはずなのに、苦しい。なんて自分勝手な性格をしているんだろう。
ほんと、自分が嫌になる。
合コンはまだ始まったばかり。こんな卑屈な思いをしていたら、周りの人に迷惑をかけてしまう。切り替えないと。
今回の合コンは見た感じ6対6だ。そう思ったが、どうやら違うらしい。
ガラガラと勢いよく扉は開いた。
「おう、来たか!」
何人かの別の大学生の集団が入ってきた。雰囲気からしてこちらも合コンらしい。
「おぉ、お前らもここだったか」
幹事の友達が何人かいるようだ。あちらは5対5。
「席近いしどうせなら一緒にやっちゃいます!?」
「いえーーーい!いいねいいね」
「だってー、楽しそうだね」
反対隣に座っていた友人が嬉しそうに声をあげていた。あちら側にターゲットを発見したらしい。鋭く光る眼は猛獣の如し、でした。
「どう一緒にやってもいいよね!」
「賛成ーーーー!」
「おい、京治。お前は?」
ドクリ。
心臓が今までにないほど跳ねる。京治………?
「別になんでもいいよ」
「んじゃけってーい」
名前も声も聞いたことがあった。ただ、姿は確認できなかった。後ろを振り向いてはいけないと、そう警報が鳴り響いていた。
席が近かったことがあり、机はすぐさまつけられた。セッティング中も私は下を向いたまま。彼に顔を見られたくなくて。
さっきまで会いたいと焦がれていた相手に会えたのに、実際会ってみると、どうしてこんなことしかできないんだろう。
自分を情けなく思いつつ、再び開始された合コンに眼を向けていた。一瞬見えた京治君は一番端っこの席。かく言う私も反対側の端っこの席。
11対11になった今、私の姿を確認できるわけがない。今の位置に安心した私は、少しずつ顔を上げた。器用に友人に隠れながら、正面の人と話を進めてみる。
このまま終われ……!このまま終われ…!と思っていると、
「じゃあシャッフルターイム!じゃあ今から男子は右隣に移って」
「あはは、シャッフルじゃないじゃんそれ!」
いらない……………!いらないよそのタイム。なんで、……あれ、合コンってそういうものだった!?
私はパニックになりながらも、まだ一度しか動いていないことに安心を覚える。
そしてまた定時になるとシャッフルタイムが開催される。それを二回繰り返すと、そろそろ素顔を見られてもおかしくない場所までやってきた。どうしよう、この場からどうやって逃げよう。というかなんで私は京治君に会いたくないんだ……?そうか後ろめたいことがあるんだ!
京治君になんであの日電話にでなかったのと責められるのが怖いんだ。
「んじゃ、今日はここら辺にしとく…!?」
「そうだなー、メアドゲットできたし」
「そうだねー」
次々と賛同の声が上がる。よし、いいぞ皆。その調子だ!
「じゃ、今日はここまでってことで!」
その言葉を聞いて、私は自分が出さなければならないお金を友達に託して、足早に居酒屋を後にした。ごめん、あとで事情はしっかり説明するから、今日は行かせて。内心でスライディング土下座をしながら、スタスタを夜道を歩く。
(暗い〜。お化けでそう〜。)
この道を真っ直ぐ抜ければ駅がある。そこまでの辛抱だ…!拳を握ってそう思った瞬間だった。
後ろから何やらタッタッタと走る音が聞こえる。夜のランニングのおじさんだろうか。懐中電灯も持たずによく走るなぁ。
手首を、何者かに掴まれた。何者かにっていうより走ってきた人物なんだろうけど。
『……きゃっ!』
痴漢!?私は腕を振り払おうとしたけど、相手の力が強すぎて。
相手に引っ張られるのと同時に、私は謎の人の胸に向かって大きくダイビングしてしまった。あまりの一瞬の出来事に声をあげられずにいると、ふわっとどこかで嗅いだことのあるような匂いが鼻腔を掠めた。私が落ち着く匂いだった。
『け、じ………くん?』
「………会いたかった、名前…」
あい、たかった……?今、京治君は確かにそう言った。