/不安を抱えた夏/
小3の冬休み。
平年に比べていくらか暖かいように思う。それは私の心が晴れているせいなのかもしれないけど。
今年も何の変哲もない冬休みをおくるのだろうと思っていたから、余計に嬉しさが跳ね上がる。
あぁ、待ち遠しい。早く一目でも見たい。そう思って丘に通った。
そして私が丘に行きだしてから4日後に、京治君は約束通りあの丘にやってきた。
夏に比べて丘に行くまでの道のりはすごく険しいけど、彼は毎回きてくれた。そしてまたくだらない話や雪合戦、雪だるま作りとかで盛り上がった。京治君は器用で、私よりものを作るのが上手だった。
特に雪ウサギが可愛かった。
器用に雪を丸めて、可愛い雪うさぎを作って私にくれた。冬だから、なかなか溶けない事を良いことに、私は暫くそれを見つめていた。そうしたら、"見すぎ"と京治君に笑われた。それと一緒にまた作ってあげるから、と言ってくれたから、私は上機嫌になっていた。
私は細かいことが苦手で、大雑把だから京治君の方が女の子らしいと言って笑った。京治君はそれが不満だったようで、ムッと顔を顰めた。
もう作ってあげない、と言われると、私は急いで謝った。すると京治君はしてやったり顔で私に笑いかけた。ひどい…。
京治君は寒さに慣れていないせいで、私よりずっと厚着をしていた。手袋もマフラーもしているのに、寒そうで、鼻の先が赤くなる彼を見て、私まで寒くなってきたこともあったなぁ。どんなに寒いところに住んでいても寒さには慣れないが、もっと慣れていない人が来るとこんな風になるんだ。
そのあと、小4,5,6の夏休みと冬休みに例に漏れずまた会った。どの年をとってもそれは大切な思い出になっていた。私のアルバムが京治君で埋まってく。頭の中はいつだって京治君でいっぱい。
徐々に大人になっていく京治君の変化を、近くで見ることができて幸せだった。勿論小6の前には赤葦の葦って書けるようになっていた。
会えない間は連絡手段もないので、まったく声も顔も見ない状況で、毎年早く長期の休みがくるのを待ってたなぁ。今考えれば、互いの家の番号を聞けば良かったのに、聞かなかった。待つことが暗黙の了解のようになっていた。もし、電話番号を聞いたとしても、実際に会わなければ意味がないと感じていたのだろう。
彼への想いは年々募っていく。彼が夢に出て来るようにもなったし。私ってば本当に京治君が好きねぇ。
…………好き?
あぁ、そうか、私は京治君のことが好きで好きでたまらなかったんだ。だから会えないとこんなに胸が痛くて、こんなにも会いたくなってたんだ。
そして、今日は中学生になってから初めての夏休み。私が通う中学校は、4つの小学校が合わさって構成されている。13人からプラスした新しい友達ができた。友達100人できるかなどころか、同級生は100に満たない。
待ちに待った夏休み初日は蒸し暑い。噴き出すような汗を拭き取りながら、歩みを進める。あの丘が私を涼しくしてくれる。癒してくれるんだ。
そんなワクワク気分であの丘に向かう。
家族にはちゃんと丘に遊びに行くと言ってある。別に私に友達がいないわけじゃない。でも、あの丘が好きだから暇さえあればいつでも遊びに行く。
中学生になった今でも、部活には所属していない。運動して汗をかくのもいいけど、丘にいけばいくらでも走り回れるし、いい運動場所だ。あの自然のグランドのおかげで豚ちゃんにならずに済んでいる。
ありがたや〜、ありがたや〜。
そして丘でのもう一つの楽しみ。それは少し大人になった京治君に会うこと。
毎年恒例になったそれは、いつも私の胸を高鳴らせる。冬休みから夏休みの間の長さは半年ほどあるために著しい成長の変化を見て取れる。それが楽しみなのだ。
でも、今年は夏休みが始まってから2週間くらい経っても彼はやってこない。どんなに待っても姿が現れない。
東京で何かあったのかな?それとも、私と会うことが嫌になっちゃったのかな?この膨れ上がった想いを治すことができるのは貴方しかいないのに。
京治君。ねぇ、今すぐ会いたいです。