遊園地に必ずと言っていいほどあるもの。それは最初に『お』がついて、最後に『き』がつくあれだ。
そう、言わずもがな私が大嫌いなお化け屋敷である。
まず、真っ暗なところも苦手だ。
狭いところも苦手だ。
閉じこめられる状況も大嫌いだ。
それにお化けという分けのわからん存在が苦手だ。いかにもあの何か出てきそうなあの雰囲気も苦手だ。出てくるまでのあの嫌なドキドキ感、あれも苦手だ。
「名前ー?さっきから震えてるけどもしかして怖いんですかぁー?」
と私を嘲るように嘲笑したのは月島蛍君その人である。
「怖い…、怖………くない!怖くないよ!」
これ以上馬鹿にされたままというのも嫌なので、無意味な抵抗をしてみた。そもそも何故私はお化け屋敷に入ることになったんだっけ?
そもそもの事の発端は、蛍君が私がお化け屋敷を嫌いであろうことを予測していたことにある。多分、怖がっている私の反応を見て自分が楽しみたいんだと思う。なんて性格の悪い人だ。
とまぁ、私は簡単に蛍君に口車にのせられて今に至る。
そしてお化け屋敷内。
電気が消えて真っ暗な部屋では、何度も彼の名を呼んでは存在を確認した。
「…蛍君いる?」
「そんな何回も確認しなくたっているよ。ちょっとは静かにしたら?」
「…いや、いや、静かにしたらもっと怖いって!」
「ははーん。やっぱり怖いんだねー」
し、しまった。
ここまできたんだからいらない意地を張らないで素直になろう。
「うん、怖い!怖いから…手、繋いでいい?」
「……!」
「もうダメ…」
「別にいいケド…」
暗闇の中で蛍君がどんな表情をしているのかは分からないけど、明らかに動揺していた。可愛いところもあるものだ。
少ししてから、繋がれた手は自然に恋人繋ぎになっていて怖さの中に顔を綻ばせた。
「…ありがと」
「………早く行くよ」
そこから出口までは心臓のドキドキでお化けに集中なんか出来なくて、高鳴る鼓動をなんとか鎮めようとしていた。
prev|10|next
高鳴る鼓動