何度も繰り返す
『及川君』
「なになにー?」

俺の名を呼ぶ可愛い人。そちらに視線を向けると、下を向いてギュッと服を握る彼女の姿が。何かで悩み事かなぁ。

『えっとね。ちゅうがしたい…です』
「…………。」

勇気を振り絞って言ったということがよく伝わる言葉だった。
……………、ん?ちょっと待って今、なんて?

もしさっきのセリフが俺の聞き間違いだったら恥ずかしいから、念のためもう一度聞いておこう。


「ごめん、名前ちゃん、もう一回言って。」
『えっ……、えっと。二回目は言わないよ!』

そりゃそうか。あんなに顔を真っ赤にして言ってたもんね。

『及川君はしたくない…?』
「したい……、したい!…してもいい?」

結果はもう分かっているのに、してもいい?なんて聞くあたり。
俺は名前ちゃんをイジメたくなるらしい。返ってくる反応がいちいち可愛いから。

『うん。お願いします』


キスをするのに了承を得るなんて名前ちゃんらしいっちゃらしい。したい時にいつでもする俺とは大違いだ。ちょっとした罪悪感を覚えるが、いまは全く気にしてはいられない。

彼女からのお誘いを無下にするわけにはいかない。

「目、瞑ってて」

名前ちゃんはきれいな瞳を伏せて照れくさそうに目を伏した。
なんかそういう反応されるとこっちの方が照れない?かわいいなぁ、まったく。


俺は彼女の頬にそっと手を当てて顔を近づける。落ち着け、落ち着け……。柄にもなくバクバクする心臓の鼓動が、頭で木霊する。時計の針みたいに正確ではない鼓動は、音の大きさや、速さを変化させる。


ちゅ、と小さくリップ音を立てて名前ちゃんと唇がくっついた。
でも、一回だけじゃ物足りなくなって、二度、三度とくっついたり離したりを繰り返した。

『もっと…、』


やれやれどうしたのかな今日の名前ちゃんは。やけに積極的だぞ。そんな彼女を見ることができた喜びに、俺は更に唇を合わせた。
prev|9|next

何度も繰り返す