未来を愛する私達
月島birthday! 2014

蛍君は言ってはくれない。


私の変化にはいつでも鈍感。髪を切ったって気付きもしない。一生懸命おめかしをしたって可愛いの一言も言ってくれない。



本当に私のこと好きなのかな。


君の視界に私はちゃんと映ってる?ときどき不安になるよ。それで考えれば考えるほど、どんどん重い女になっていっちゃうよ。


私だって甘えてみたいとか思うけど、蛍君の前でくらい可愛く振る舞っていたいと思うけど、どうしたらいいか分からなくて。


だけど私が何気なく言ったことを覚えていたり、体調が悪いとそっと気遣ってくれたり、大切に思ってくれてるって感じる時もある。


好きだよって、その一言くらい言ってくれたっていいのに。


もしかして、好きだと言わないのは私のことは嫌いだから?それとも照れ隠し?


もしも前者だったとしたなら、私は直ぐに蛍君の元から去ろうと思ってる。潔くはいかないのはわかる。きっと未練が残るのも分かってる。ただ、私は少なからず蛍君の幸せを願ってるから。


「蛍君……、好き…。大好き…」


一人で虚しく呟いてみても何も起こらない。例え蛍君の前でそう言っても、きっと彼は無言で私を抱きしめるだけ。私は余計悲しくなって、抱いていたクッションをさらに強く抱きしめた。


すると、ゆっくりと頬に生暖かいものが伝った。


「あれ…、なんでっ…」


涙なんか…。拭っても拭っても止まらない。眉を顰めて涙の理由を探る。気づけば貴方のことをことをこんなにも好きになっていた。


プルルルル、プルルルル………。


止まらない涙。鳴る電話。蛍君と表示されたディスプレイを見て、緊張が走る。ここで電話にでたらたらきっと涙声で、泣いているのがバレちゃう。一回落ち着こう。落ち着いてからもう一度電話をかけよう。私は一度彼からの着信を見過ごすことにした。すると、案外早く電話は鳴りやんだ。


大きく深呼吸をして、心を落ち着かせる。ティッシュで鼻をかんでから心の準備をする。そして少々震える手で電話をかける。名前を見るだけで胸が跳ね上がった。


コール音が響く。


二、三回の後にお目当ての人は電話に出た。

<もしもし……>
「もしもし………?」

ちょっと不機嫌な気もする蛍君の声色。私は泣いていたのを悟られないように、見えない笑顔を取り繕う。あ、ダメだ。声を聞いただけでまた泣きそう。そこで一度鼻を啜れば

<…泣いてるの?>


と鋭い答えが返って来た。

「な、泣いてないよ!」
<…本当、名前って嘘下手だよね。今どこ?>
「…部屋、だけど…。」
<今いくから>
「え、ちょ………、」


無理矢理電話は切られ、私は意味もなく慌て始める。とりあえず泣いて真っ赤になった顔を直さなきゃ。と言う考えも虚しく、電話が切れてから20秒もしないうちにインターホンが鳴った。こんな時間にこのインターホンを鳴らすのは宅配のお兄さんか蛍君くらいしかいない。


そう確信して喉を鳴らす。この顔を見てどう思うだろう。

「…はーい」
「やっぱ泣いてるじゃん」


恐る恐る玄関のドアを開けると、そこにはきちんと正装した蛍君がいた。スタイリッシュに着こなしていて、スタイルの良さや顔の整い加減に羨ましさを覚えた。って今はそれどころじゃなくて。


「あがるよ」
「…うん」


どうして蛍君はこんなに冷静でいられるんだろう。どうして私が蛍君と付き合えたんだろう。

「……それで」
「………」
「なんで泣いてるわけ?」


言い逃れはできなそう。だいたい私が蛍君に口喧嘩で勝てるはずもない。今回の場合は喧嘩じゃないけど、でも口では蛍君に叶わない。


「…自分が不甲斐なくて」
「嘘」
「……仕事で失敗して」
「それも嘘。どうせもっとくだらないことでしょ」


ある意味図星だ。蛍君にとってくだらないことも、私にとっては大切なことだったりする。


「うん。きっとくだらないことだから…、面倒なコトに巻き込んでごめんね。私はもう大丈……」


ズルい、ズルいよ蛍君…。蛍君は急に私を引き寄せてキスをした。もうこんなコトをされちゃ、どうでもいいことも、もっともっと気になっちゃうよ。もっともっと欲しがっちゃうよ。どんどん欲張りになっちゃう。


「……それで、話す気になった?」
「…、本当にくだらないよ?」
「別に、くだらない事かは聞いてから決めるし」
「………、蛍君、本当に私の事好きなのかなって…思いまして…」


後半になるに連れて声は小さくなっていく。


「は?」
「だ、だって蛍君!私に一度も好きって言ってくれたコトないから…」
「くっだらな」
「ひどっ!」


流石に強靭な私の心も傷ついた。くだらない、なんて。


「そんなこと毎日思ってるし…」
「………!」


傷ついた心も、悲しい気持ちも、そんな些細な一言で全て吹き飛んだ。


「……一回しか言わないから」
「…うん?」
「……名前のこと、……好き、…だけど」


目線をなるだけ逸らして、私とは視線を交わせようとしない。どれもこれも照れ隠しだとわかった瞬間、モヤモヤが愛しさへと変化していた。


ねぇ……次はいつ好きだと言ってくれるのかな?その日が凄く待ち遠しいよ。
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