私の通う高校には渡り廊下にベンチがある。夏場は風通しの良いのここは知る人ぞ知る隠れ避暑地だ。私の隣に座るのは黒尾くん。そして、黒尾くんが食べているのは私が作ってきたお弁当。昨日、急に私の手作り弁当が食べたいと言って、今朝大慌てで作ったのだ。
味には自信は、ある、と思う。急いでいたため味見なんてそうは出来なかった。
『どどどっ、どう……ですか?』
「んぐんぐ……ん?」
『お、お、美味しく、ないですよね』
「いやまだ何も言ってねえし」
私の挙動が怪しいのは、もちろん隣の黒尾くんのせいだ。
3ヶ月前、急に告白された。告白に急も遅いもないかもしれないけど。
勢いに押されてうっかり「はい」なんて言ってしまったがために、私はこうして毎日、黒尾くんと二人きりでお昼ご飯を食べている。
二人きりというのは昼食のときだけでなく、放課後にちょっとカラオケ行こうとか、ゲーセン行こうとか、暇さえあればお出かけに行こうとか、まあいろいろ誘われて全部断れずに着いて行ってしまう。私自身、そうやって誘ってくれるのが嬉しいというのも本音であるから困るのだけど。
いつの間にか"黒尾鉄朗"という人物に惹かれていたのも事実だ。
「ごちそうさま」
『ううぅ………』
「えぇ、何で凹んでんの?」
『だって、大慌てで作ったんですよ?急だったから冷蔵庫の中身で適当なものを作っただけで…』
黒尾くんはクラスでも人気のある男子で、でも同性からの人望の厚い、いわゆるハイスペック男子。しかもバレー部のキャプテン。見た目はちょっと鋭いけど、性格でカバーするという…。
そんなハイスペック男子と、私のような地味子が恋人同士なんて、あり得ないだろう。ほら、町でたまに見る「あのイケメン何であんな子と付き合ってんの?」っていう、まさにあれだ。
要するに、私は周りの目が怖いのだ。黒尾くんを好いてる女子は大勢いる。その人たちが今のこの状況を見たらどうなるか。………あ、体が震えてきた。
「おい、今度は震えてんぞ。夏なのに」
『な、な、何でも……ないです』
怪訝そうな顔で私を見た後、黒尾くんは食べ終わったお弁当を片し始めた。
「美味かったよ。正直、また作ってくんねえかなとか思ってる」
『お世辞なんて勿体無いですよ〜ぅ……』
「お世辞じゃねぇよ。ま、好きな子が作ってくれてるってだけで味に補正がかかるのもあるとは思うけど」
黒尾くんは笑った。ちょっと、キュンと来た。
付き合う前は全然意識はしていなかった。単なるクラスの男子くらいにしか思ってなくて、つまり、私には縁のない人物だと思っていた。でも突然告白されて、当然意識するようになって、ちょっとした表情や動作できゅんとしてしまう。……ずっとドキドキしているのはほぼ緊張のせいだ。
この胸の高鳴りをどうしてくれるんですか、黒尾君!
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黙々と落ちていく