恋愛と憧れ


今日も絶好調の及川君。ではなくて徹君。同じ人だけど、名前呼びをしないと口を尖らされるようになってしまった。

全ての人を魅了するスーパージャンプサーブ。威力はまだまだ足りないと言われているが、コントロールは完璧だ。今日もなんてカッコイイんだろう。

汗をかいていたって、どんなプレーをしていたって、どこを切り取ってもカッコ悪い所なんて見たことがない。相当努力をしないとこんな綺麗なプレーできないと思う。

「今年の一年はいい。中でも及川は芯がある。」

マネージャー長のような存在の色摩先輩が冷静に分析しているのを耳にした。他のマネージャーのみなさんはそれに同意するようにうなづいていた。

「しかもイケメン…!私、あの子狙ってみようかしら!」
「出た…、本当あんたミーハーね。」

なんて会話が聞こえてきたことはスルーしておこう。色摩先輩は同じマネージャーの先輩の発言に溜息をはいていた。

「そうだ、一年」

色摩先輩に呼ばれてゆんちゃんと私が反応を示すと、先輩は人の良い笑みを浮かべて

「もう少しで休憩に入るからドリンク作ってきてくれる?」
『「はい!」』

言われた通りに、ゆんちゃんとドリンクを作るべく水道へ向かう。最近はドリンクを作ることを許されるようになったのだ。一応マネージャーとして認められた証拠だと私は思う。


「ねぇ、名前は及川の事をどう思ってるの?」
『…徹君?そりゃカッコイイなって思うよ』
「そういうんじゃなくて、…こう、恋愛的な意味で好きとか。」

ズバリと聞くなぁ。徹君の事は好きだ。でもそれは恋愛的な意味ではなくて、彼に対する想いはひょっとしたら今まで通り"憧れ"かもしれない。

『まだ、ハッキリ分からない…』
「分からない?」
『自分の徹君に対する気持ちがまだハッキリしてないみたいなんだ。

確かに、徹君が他の女の子と話していると嫌な気分になるよ?でも、それは私が彼の事を好きなんじゃなくて憧れてるからそう思うのかなって。』

率直な意見を述べるとゆんちゃんはニコリと笑って

「その答えだけで十分だよ。名前が及川の事、憧れてない事くらい分かる。自分では気づいていないけど、名前は及川が好きなんだよ。」

真っ直ぐな目に心臓が貫かれた感覚になった。そう、なのかな。

『どうしてそう思うの?』
「悔しいけど、名前が及川を見る目は他とは違うよ。」

そんな事考えたこともなかった。自分では無意識のうちに徹君を目で追っていた事や、徹君と話す私の表情が生き生きしているだとか。ゆんちゃんには分かってしまうようだった。

「自分に素直になりな。名前なら大丈夫だって」

どこから来る自信なのか分からないがゆんちゃんは言い切った。私を包み込む雰囲気は、まるでお母さんのようだ。

そんな彼女が言うことだったらなんでも信じたいけど、私には到底自信がつきそうになかった。

恋愛って何?
まずはそこから考えないと何も始まらないような気がした。