平気なフリ


球技大会前日の休み時間。

俺の机の周りに集まった男子と一緒に、男子特有の話をする。女子がいないのは確認済みだ。

突然、俺の頭の先で、ガハハハハ!と、数人の男子の笑い声が聞こえた。もうちょっと上品な笑い方できないのかな?

「2組の藤里さん、俺めっちゃタイプ!」
「ああ、まぁ結構可愛いよな。だけどオレは4組の利川かなー」
「お前、前からそれ言ってるよなー。元気でボーイッシュな感じが好きなんだろ?」

聞いてると面白い会話。男達にはそれぞれにタイプがあって。女子にいろいろちょっかい掛けてるよな、とか思う。ん?俺も人の事言えないか。

「おう!健康的な子って良くね?ってか及川、モテモテのお前の好きなタイプは!?」
「えーー、ん〜〜……」

話を振られてウンウンと悩んだフリをする。モテモテと言われて嫌な気はしないけど、好きなタイプを聞かれると……、うん。一人だけ俺のタイプって言うのはおかしいかもしれないけど、好きな子に該当する子がいた。
 
「おい、勿体ぶんじゃねーよ!このーー!」
「えー、好きなタイプとかいないよ。女の子みんな可愛いじゃん」

なんて嘘。本当はちゃんといるんだよ。

「なんだー、つまんねー。」
「そういうお前はどうなんだよ」

自ら話を逸らす。これ以上詮索されてはうっかり口を滑らせてしまいそうだからね。

「俺か?俺は……、委員長かな。」
「………は?」

待って、いま委員長って言った?俺の意識は研ぎ澄まされる。もしも、それが同じクラスの委員長だったりしたら…。

「何組の?」
「俺らのクラスの苗字。俺モロタイプだわ」
「あー、分かるわ。一生懸命な感じが伝わってくる。頭もいいし顔もいいし」

暫く思考が停止した。

「ここだけの話、3組の星沢も狙ってるらしいぜ苗字のこと!」
「はぁ?あのバスケ部のイケメンかよ…!勝ち目ねぇじゃん俺ー」

笑いながら話はいつの間にか違うクラスの女子の可愛さについてに変わっていた。
ここまで来たら分かるだろう。俺の好きなタイプのこと。

そう、俺は名前ちゃんが好き。好きになった。平然なフリをしてるけど、名前ちゃんの前ではカッコイイ自分でいたい。

カッコイイ自分でいようとすればするほど空回りしてしまいそうで。でも、情けない自分は見せたくない。

こんな事を考えている俺を岩ちゃんは笑うだろうか。もし、岩ちゃんが恋の事で悩んでいたりしたら、岩ちゃんらしくなさすぎて笑ってしまう自信はあるが。

恋に惑わされるなんて、こんなの自分らしくない。俺はただ、前みたいに名前ちゃんに話しかければいいじゃないか。それが一番自分らしいだろう?なんで渋る必要があるんだよ。

もう、ウダウダ悩むのは辞めて、ちゃんと告白しなきゃ。他の誰かに奪われてしまう前に、俺のモノにしないと。…そうだ、球技大会が終わったら告白しよう。

でも少し怖い。彼女に嫌われることが。自分の想いを伝えて、それでもし叶わぬ恋だと知ったなら暫く立ち直れなくなりそう。自分って割と女々しかったんだ。