自覚症状
それは今日の練習も終わり、岩ちゃんと二人で家に帰っている時だった。練習で例外に漏れることなく垂れた汗が乾いた後は、どうしようもない寒さに見舞われる。
「お前本当にキモいぞ。」
「え、何?急に酷くない!?」
「ウジウジしてて気持ち悪いから早く苗字に告白しろよ」
「……え」
ヤバイ。キモいと言われたことよりも岩ちゃんに好きな子の事がバレていたことの方がダメージ大きい。そんなに分かりやすかった!?いや、それとも昔馴染み故の勘?なんにせよ岩ちゃんすご!
「ほんと岩ちゃんには敵わないや…。」
いつになったって岩ちゃんには叶わない。ちゃんと俺のことを分かっていて、見ていてくれてる。こう見えて岩ちゃんはツンデレだから、暴言はきっぱなしだけど、俺のことはちゃんと理解してくれる。そんな人がいてくれるほど心強いものはない。
周りからは息ピッタリだとか言われてるけど、俺からみてもそうだと思う。
「岩ちゃん、俺頑張って告白するよ!球技大会が終わったら」
「今しろよ!」
「そんな直ぐに告白できないよ!岩ちゃんの中の俺のイメージってなんなの!?」
「苗字好きすぎ人間」
本当になんでバレたんだ!!上手く隠してるつもりだったんだけど。いや、岩ちゃんにはどんな隠し事も通用しなそうだ。いつか岩ちゃんの弱み握ってやる………。
「なんで岩ちゃんは俺が名前ちゃんが好きって分かったの?」
「苗字を見るお前の表情が緩み切ってる。苗字と話すときも妙にデレデレしてる。雰囲気変わるんだよ、お前」
「岩ちゃんほんと俺の事良く見てるねぇ。もしかしてストーカーですか?イテッ!」
「ちげーよ!!アホか!」
冗談で言ったのに、後頭部思い切り殴られた。痛いじゃないか!相変わらず岩ちゃんの目は本気だ。おー怖い怖い。でも事実を言い当てられて少しビックリしてる。
「とにかくちゃんと想い伝えて砕けてこい」
「砕ける前提!?ちゃんと成功してくるし!」
「どっからくんだよその自信!」
簡単にフられてたまるか!ここはちゃんと長期戦を覚悟しないと。俺が女の子に対してこんなに真剣になることは生まれてからいままで一度もなかった。恋愛観は小学校の時に比べて比にならないくらいに変わった。俺もちゃんと成長したんだ。
1人の子を好きになって、1人を選ぶってことは難しいかもしれない。でも将来はちゃんと一途にその人だけを想わないと、築いてきた信頼関係と言うものは簡単に破壊されてしまう。
そうは分かっているけど、俺はちゃんと1人の子を好きでいられるだろうか。ちゃんと1人を愛せるだろうか。
そう考えた時に、名前ちゃんとの出会いは奇跡だと思った。今は君しか好きじゃないし、多分名前ちゃんしか愛せないと思う。そう感じるほどに彼女に夢中になっている自分がいる。
これは自惚れかもしれないけど、彼女も俺のことは少なくとも好きでいてくれてるだろう。
でもやっぱり怖い。拒否されるのがなにより怖い。
なにも焦る必要はない。俺は俺のペースで確実に彼女に認めてもらえばいいんだから。
(あぁ…、好きだなぁ。名前ちゃん)
(そういうのがウゼェ。)
(それもダメ!?)