ざわめく空間


早くも球技大会はやってきた。

私がファン一号になってから数ヶ月が経過した。

グラウンドは灼熱の光に照らされて陽炎が立ち込めている。すっかり夏の気配だ。今日は待ちに待った球技大会が行われる日だった。全校生徒が一斉に同じように動き回るお祭りのような日。


この学校では一学期に体力測定と球技大会を開催して、二学期は文化祭を開催する決まりになっている。かと言って文化祭は高校ほど盛大にできるわけではない。だから、他の学年との交流は部活に所属していない限り、皆無に等しい。


もし、憧れの異性の先輩がいるのであれば同じ部活に入ったり、積極的に教室へ行ったりとしなければ、話すことはおろか、姿を見ることさえ難しい。でも後者の場合だと帰宅部の生徒にとっては、かなりハードルが高いものとなるのは否定できない。それに誰が好きなのかなんて直ぐにばれてしまう。だから女子は部活のマネージャーになったり、放課後大人数で部活動を見学してたりといろいろ工夫はしているようだ


球技大会当日の女子生徒たちは、足早に目的の先輩や男子生徒が出場するという球技の場所をチェックし、憧れの人にアピールしようと水面下で必死な戦いをする…らしい。

バレー部の一年のマネージャーは、先輩と合わせて4人。部員の数に見合った多さだと思う。ただ、最近感じるのは、来年はマネージャーの希望者が増えそうだなとか…。だって徹君がいるから。徹君のその容姿に惹かれてマネージャー志望の子が増えそうだ。ちょっと、ううん、すごく悲しいなぁ。


この前、徹君に勧められたように、この前の話し合いでバレーの枠に立候補して見事勝ち取った。バレーのチームには親友のゆんちゃんも居て、知らない人ばかりだけでなく、何だか安心したのも事実だ。バレー部ならバレー、バスケ部ならバスケだとか、その部活の種目には参加できないらしいので、徹君はバスケに参加するようだ。

ただ球技大会の話し合いの後、出場競技の練習は放課後だったらしく、チームワークを高めるために練習を呼びかけたは良いけれど、大半のクラスメイトは部活等に散ってしまって、思うように人数が集まらずにボールを触れた程度で今日を迎えてしまった。


徹君はスポーツとか、特に球技はなんでも出来そうだ。


徹君のことだから、球技大会の今日も凄く応援されちゃったりして。それだったら、私の応援の声も届かないだろうし、やっぱりここは同じバレー部の岩泉君とかを応援した方がいいよね。違うクラスだけど、それくらいは許してくれそう。


授業が無い今日は朝からクラスでオリジナルのはちまきを巻いたり、Tシャツに着替えたりして、ざわざわと普段の授業らしくない笑い声やざわめきが聞こえていた。私も気合を入れてハチマキをする。


ざわめく教室の私の隣で熱く語る女子二人組は、そんな黄色い話を繰り広げながらヘアセットにメイクと急がしそうに鏡を見ていた。


「髪の毛変じゃない?」
「うん、変じゃない。ねー、誰かケープ持ってない〜?」
「ごめん、今持ってないー」
「えぇー、どうしよう。髪の毛ボサボサになっちゃうじゃん。」

なんとも女の子らしい会話である。今時の子達はこんな会話をするのか。今でも十分素敵な髪型をしているのにまだ足りないのか。


「げっ!私たちの試合の時間と先輩の試合時間かぶってるじゃん!最悪ぅ〜」
「ソフト選んだ人達のカップル成立率高いって、先輩から聞いたんだよね」


各々が自分の試合のことよりも他人の試合や身なりのことを気にしていて、私はなんだか呆れるようなどうでも良いような、そんな感覚になっていた。


私はいつものヘアスタイルでハチマキをしているから、髪の毛を弄る必要はない。…ただ最近髪の毛が伸びてきてちょっと邪魔になっているのは事実だ。

髪、結ぼうかな…。