頑張る横顔
及川side
「あれって苗字さんじゃね?」
「うわー、いつもと雰囲気違うよな。」
俺が名前ちゃんのいる体育館に着くと聞こえてくる男どもの会話。苗字さんとは名前ちゃんの苗字で間違いないだろう。
いつも名前ちゃん、名前ちゃんと呼んでいるから、たまに苗字を言われると誰だか分からなくて感覚が麻痺る時がある。
それにしても、いつもと雰囲気が違うとはどういうことだろうか。興味深々で体育館を覗くと…、そこには髪を結っていた名前ちゃんがいた。確かに雰囲気が違う。
入学式の時の髪型とは違って、洒落っ気が入り混じった髪型。大方名前ちゃんの友達がアレンジしたのだろう。なんて言うか…、可愛いなぁ。いつも以上に可愛さが際立って見える。
やっぱり他の女の子とは違う魅力を感じる。可愛い、って思うし、触りたいっても感じる。
未だかつてないこの感情に振り回されている俺がいる。
俺のクラスの女子バレーの対戦相手は貫禄のある2年生。相手には小学校の頃バレーで有名だった女子の先輩がいた。こりゃ厳しい戦いになるな…。でも不思議といい試合を展開してくれる気がしていた。
そして、予想通り接戦だった試合。
名前ちゃんは俺が教えた通りのバレーをしていた。綺麗で、伸び伸びしていて、誠実で。
特に熱を入れて教えたサーブが凄まじく良かった。元々運動神経は悪くない子だったから、教えがいがあった。でもまさか此処までとは思わなかった。
結局負けちゃったけど、悔いは残ってなさそう。
「あぁー、負けちゃったね。」
『そうだね。…でも凄く楽しかったよ!』
「うん、来年こそは頑張ろう。」
試合を終えて、友達と話している、スッキリした顔の名前ちゃんに話しかけてみようっと。
「名前ちゃん、お疲れ様。特訓の成果が出てたよ!」
名前を呼ぶとくるりと振り返った彼女。近くで見るその髪型に心臓が高鳴った。滅多にないから新鮮だ。お世辞抜きで可愛いなぁ。
『本当?ありがとね、ここまで出来たのは徹君の指導のお陰だよ!』
こんなにも純粋な目をした彼女に、ちょっと下心ありながら教えてましたなんて言えない。
「ううん、名前ちゃんが頑張ったからだよ。」
すると彼女は不意に笑顔が綻んで、汗さえもキラキラとして見える。
『…ありがとう。そうだ、及川君の試合あと少しだよね。』
「そうだった!ごめん、行ってくるね。」
自分の試合の事はこれっぽっちも頭になかった。そうだ、これから俺試合だったよ…。
名前ちゃんに応援してもらったし、これは俺も頑張らずにはいられないよね。
よ〜し、頑張るぞー!