ギャップ


及川side

「フゥー、終わったぁー!」

入部初日にもかかわらず、容赦ない練習メニュー。俺はついていけないこともないけど、大半の一年が脱落していた。まぁ無理もないケドね。

長い部活が終わってから、次々に選手がドリンクをマネージャーの元に受け取りに行く。ドリンクを受け取りたい列に俺も並ぶ。流石に飲まないとやっていけない。大人しく並んでいると、

『及川君、お疲れ様!』

と凛とした声が聞こえてきた。声のする方をチラリと見ると、ニッコリ笑顔の名前ちゃん。部活後には癒しになってくれそうだ。

「名前ちゃんー、お疲れ〜。」

疲れているけど、情けない顔を見せたくなくて疲れてないよアピールをする。役者だなー俺。

「おい、クソ川。早くネット片付けるぞ!」

すると何者かによって(犯人はだいたい分かっているケド)、俺の後頭部めがけてボールが投げられた。いいもん!ちょっと慣れたもんねー!

「イタッ!何すんのさ〜、岩ちゃん!」
「何すんの、じゃねーよ!ネットの片付けは一年の仕事だろーが!」
「ちぇー、せっかく名前ちゃんと話してたのにー」
「はいはい、分かった分かった。えっと…、苗字、だったか。」

わ、珍しい。岩ちゃんが自分から女の子に話しかけに行ってる!しかもどこかぎこちない。

『は、はい!?』
「なんでそんな堅くなってんだよ…。別に怒るわけじゃねーって」
『が、がってん承知の助!』

がってん承知の助………。名前ちゃんが、がってん承知の助?

「がってん承知の助って……、アッハハハ!名前ちゃんオモシロ!」

なんだろ、このギャップ!もっと真面目でこういうこと言わない子かと勝手に決めつけてたけど、まさかここまでとは。いいねいいね!すっごく気に入った。

言った本人は顔をトマトみたいに真っ赤にして頬を抑えている。可愛いー!

「まぁ……その、なんだ。これから宜しくな」
『うん。こちらこそよろしくお願いします。』

いいなぁ、二人のこの初々しいカンジ。俺にはないウブさにちょっと嫉妬しちゃう。

「俺もヨロシクね名前ちゃん」
『よろしくお願いします…!』

今日はいい収穫があった。名前ちゃんってこんな面白い子だったんだ。なんだかイジり甲斐がありそう。最初はただ真面目だけの子だとばかり思っていた。

その日、名前ちゃんが岩ちゃんの名前を岩太郎だと思っていた事が発覚して、お腹が痛くなるくらいに笑った。頭がいいだけではない、思考回路が読めない子である。こういう子嫌いじゃない。