どんな顔で会おうか
「ソワソワしすぎだよー、トイレ?」
『違います!』
徹先生と会うのはこれで3回目。それにしてもデリカシーなさすぎ!女の子にそんな事言いますか?明るいのは助かるけど、デリカシーなさすぎるのもちょっと……。
でも、ただカッコいいだけの人だったら良かったのに、なんと教えるのが上手で、今まで知らなかった計算方法なんかを教えてくれた。憎めないキャラとはまさにこの事。悔しいけど嫌いにはなれないタイプの人だ。
大学には、行かなくてはいけないんだと思う。目標とする大学もあるっちゃある。でも、時々本当にその大学に行きたいのか、行って何をしたいのか分からなくなる。将来の夢をまだ見つけられないでいる私にとって、何が自分のためなのかまだわからないでいた。
文系だから、授業は英語と国語が中心。昨日言ったとおり国語はよしとして、問題は数学。文系だからと言って数学は避けられない教科。大体の内容は理解出来るんだけど、肝心なところは分からない。なのに徹先生はスタイリッシュに分からなかった問題を教えてくれる。ちゃんと実力はある人なんだ。
「こらこらー、どうした?ここで詰まってたら先に進めないぞ」
『んーー…』
特に苦手な二次関数で行き詰まってしまった。当然のことながらこういう出来ない問題を減らしたい。出来ない問題があると本番で困るし、そして今分からない問題があると、その問題を教えるべく近づいてきた徹先生との距離がありえないほど近くなってしまうのだ。
「ここはね、条件を見れば分かると思うけど……」
だから近いって!そんなことは大声で言えなくて、口を噤む。くっそー、なんて綺麗な顔なんだ。神様に愛されたような顔立ちで、憎たらしいほど綺麗。
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?及川サンの話を無視するなんて…、メッ!」
『うわっ!』
メッ、なんて子供に対して使うような言葉を言って、おでこにデコピンされた。ちょっと痛かったのでおでこを抑えて頬を軽く膨らます。
『痛いです〜……』
「えっ、そんなに痛かった?ごめんごめん!謝るから怒らないでー」
『じゃあ、もう一回この二次関数の問題を教えてくれたら怒りません』
「ハハ、言ってくれるね〜」
時折見せる子供のような笑顔に何度もキュンとさせられる。徹先生はポンポンと私の頭を軽く撫でた。離れていく手を見て名残惜しく思う。
「じゃあもう一回説明するよ」
『お願いします!』
私が徹先生を好きなんだと言葉にしてみると、ドクリと心臓が跳ねた。同時に顔に血がのぼって頬に手を添えると、仄かに発熱している。両手で顔を覆う。
好きなんだと確認すると、どういう顔をすればいいのかわからなくなっちゃった。いつもどんな顔してた?