高校
高校のバレー界でちょっとした有名人である佐久早聖臣は、私の幼なじみである。
彼とは、家は隣とまでは行かないがそこそこ近い。赤ん坊の頃からの知り合いだ。もはや家族のように育ってきたといっても過言ではない。
同い年だけど、その雰囲気からか聖臣の方が上に見られることが多い。
聖臣は身長が高く、基本的には大人しいため、最初はクールでスタイリッシュな印象を周りに与えていた。入学当初は一部の女子から人気があったりとかなかったりとか。
そんな聖臣は最近少し難しい。昔から不思議な性格をしていたが、最近は更にそれに磨きがかかっている。
私はずっと一緒にいたせいか、不愉快に感じることはなかったが、どうやら周りにとってみればとっつきにくい性格らしい。最初は聖臣のファンだった女の子も、時間の経過とともに彼の存在を気にしなくなっていった。
周りはそういうが、彼はたまに手がかかる時があるが、私はそれを全く不快に思わなかった。
そんな聖臣は、今絶賛ミーティング中だ。
私はその聖臣を教室で待っている。今日は早く終わるから、と言い残して教室を出て行くと言うことは、俺が来るまで待っていろと言うことだ。
あぁ見えて意外と分かりやすいところがある。
ミーティングの日に同じようなことを言い残していったが、待たずに帰ったら次の日の機嫌が悪かった時があった。大人しく待っていた方が私のためになることが分かった。
それに、彼を待つ時間は苦じゃない。
「苗字?何してんの?」
『あれ、そっちこそどうしたの?』
机と向き合ってスマホをいじっていると、クラスメイトが現れた。勿論聖臣よりも仲のいい男子が存在したことはないが、そこそこ仲がいい男子の内の1人だ。
彼は野球部であり、本来であれば、学校から少し離れたグランドで練習中のはずである。
「今日はミーティングだけだった」
『あ、そうなんだ。私は聖臣を待ってるとこ』
「ほんと仲いいよなー。幼なじみだったか?」
『そうそう!小さいときからずっと一緒なの』
彼が来てから、話が盛り上がってしまい、ついつい時間を忘れて話し込んでしまった。
『そう言えばさー』
「名前」
次の話題に移ろうとしていたら、聖臣の声が背後から聞こえた。少し不機嫌そうな声色に、一瞬緊張が走った。
『あれ、ミーティング終わったの?早かったね』
「帰るぞ」
『今良いところだったのに〜』
「いいから」
無理やり腕を掴まれて立たされた。聖臣の身長が大きすぎるせいで、勢いよく上に引っ張られた。私には容赦がない男である。
挙げ句の果てに、話を最後までさせてくれないという非礼な男でもある。
『ごめん、聖臣も来たし帰るね』
「おう、またな」
『じゃあね』
別れをまともに言う暇もなく、ずるずると引きずられる。
『痛いー、引っ張らないでもう!』
「じゃあちゃんと歩け」
『分かってるから!!』
腕を引かれるままに歩いてきたが、非常に歩きづらい。限界を感じて文句を言うと、ようやく手を離してくれた。
聖臣は今みたいに、時々こうして人の話を邪魔してくることがある。一体なんの恨みがあるか分からないが、やめてほしい。
「俺が来いって言ったらすぐ来いよ」
『わがままー!!』
なんて勝手な男だろう。私にも私の事情があるというのに!!
(佐久早って絶対苗字のこと好きだよな…)