大学

私たちは互いに都内の大学に進学した。

大学は違えど、距離は近いので時間さえあればどちらかの家に行き来したりする。

ここで言及しておきたいことがある。それは私達はまだ付き合っていないということである。まだ、というとこれから付き合う可能性があると言う感じだが、それさえも分からない。
今の私たちの距離は、友達以上恋人未満という言葉がしっくりくるほど、境界線のない曖昧なものだった。いつまでこの距離が続くのか、もちろん当事者たちは知らない。
とはいいつつも、彼の隣はやはり心地が良いので、一緒にいることができる時は、一緒にいたいと思うほどには彼のことは好きだ。少なくとも嫌いな人は遠ざける彼のことだから、私のことは少なからず好きでいてくれているんだろうけど。そんな気持ちを言葉にされてないし、私自身も言葉にしていないから、結局はまだこの何とも言えない関係が続いていくのだろう。

そして、そんなもやもやした気持ちとは裏腹に、私は、聖臣と私の家で怖いテレビ番組を見ている。怖いことやものが苦手なくせに、少しの好奇心のせいで見たくなってしまう私は、その怖さを共有するため、聖臣に頼み込んで一緒に見てもらうことにした。

嫌な顔をしながらも、渋々つき合ってくれるところが聖臣のいいところだ。

明日、バレーの練習はないらしいという情報を得て誘っているため、抜かりはない。さすがに、部活があると聞いたら誘っていない。


『ぎゃーー!!』
「うるさい。静かにしろ」
『無理、今、いたっ!後ろ!!!見た!?」
「…くっつくな。鬱陶しい」

平和だった画面に突然幽霊が登場したので、女の子とは思えない叫び声をあげてしまった。私は隙間ができないほどに聖臣にくっついた。完全に腕にしがみついている状態だ。

聖臣は私がどれほど言っても離れないため、大きくため息をついた。

「怖いなら見るなよ」
『…ちょっとだけならいいかなって思って…。…それに、聖臣もいるしさ』

完全に彼を信頼している私は、何かしらにつけて聖臣を頼る。小さい頃からそうしてきた。大抵のことは聖臣に頼めば冷静に対処してくれた。今回も例に漏れないらしい。
呆れた顔をしつつも、彼は私を見捨てないでくれている。なんだかんだ言って優しい。


そして、何度も絶叫していると気がつけば番組が終わっていた。時刻はまだ21時である。まだといっても、あたりはすっかり真っ暗だ。

「帰る」

本来の用事が終わったため、さっさと帰ろうとする彼に焦りを覚えた私は、必死に腕にしがみついて帰るのを阻止していた。腕を掴まれ身動きがとれなくなった彼は、一瞬不愉快そうな顔をしたけど、すぐめんどくさそうな顔に変わった。


『聖臣ぃ〜、怖い…帰らないで一緒に寝よう〜』
「はぁ?馬鹿だろ」
『本気で!お願い!!』
「名前寝相悪いだろ」
『今日だけはいいから!!お願いだよ〜』


実は佐久早は彼女のお願いに弱い。今まで誰にも言ったことはないが、本気でうるうるしている時の表情を見るとひるんでしまうらしい。それを知らず知らずのうちに習得した彼女は、今回も意識せずその戦法を使い始める。

『独りにしないで…怖いから…!』

彼女の両腕が佐久早の左腕を掴み、少し震えている。これは本気で怖がっている時の表情だと理解した彼は、ため息をついた。どうやら観念したようだ。

「……分かったからまず離せよ」
『え、…いいの?』
「いいから、…その代わり」
『なになに?』
「明日は起きるまで起こすなよ」
『うん!ありがとう』

どうやら交渉が成立したようだ。

結局、同じ布団に寝ることはもちろんなかったが、布団をなるべくくっつけて眠ることになった。寝るまで手を握っていて欲しいという彼女の必死な願いを、断ることもできず、しばらく寝付くことができなかった佐久早であった。
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