及川徹の場合 2
名前と離れて2日。
まだ彼女から連絡はない。なかなか手ごわい。2日くらいで音を上げると思っていたから、意外性にびっくりした。
「お前、なんか嬉しそうだな」
岩ちゃんにそう問われて事情を説明をすると、俺を殴りそうな勢いでこっちを見ている。
「本当、振られても知らないからな。お前、絶対別れた後引きずるだろ。未だかつてないほど落ち込んで、周りに迷惑かけんなよ」
「なんで別れる前提なのさ!!別れないよ。名前にそんな事できるわけないよ」
「どうだろうな、女は何するかわかんねーからな」
「俺の名前が!俺と別れるって?面白い冗談だね」
「言ってろ。とにかく俺は知らねぇからな」
岩ちゃんは何度も忠告してくれたけど聞く耳を持たなかったこの時の自分を後悔している。殴りたい。
2週間経っても連絡はない。
そして彼女の会社の歓迎会があるという日の前日がやってきた。2週間ほど前に、場所と念の為日時を聞いていたから会えないこともない。
おかしい。
彼女は俺なしでも生きられるんだ。
なんだか悔しい。
俺だけ会いたいみたいじゃん。
なんで連絡もよこさないの。距離を空けたいってどれくらい?それが終わったらまた俺のそばに来てくれるの?
その時一つの可能性がよぎった。
まさか、俺と別れるつもりなのだろうか。
今まではそんな可能性捨ててたけど、岩ちゃんに言われてからいよいよ現実的になってきた。
そんな事は絶対にさせない。彼女が自分以外の男のところに行くことを想像するだけで、嫉妬で狂いそうだ。彼女をいじめていいのは俺だけだ。
俺だけが彼女のいろんな表情を見ることができるし、彼女の良いところを知っている。言葉にしたことはなかったけど、体の相性だってこれ以上ないくらいバッチリのはずだ。
だいたい5年間付き合って、今更俺以外の男と結婚しようと思えるんだろうか。
彼女の初めてを貰ったのは俺だ。それ以外の男の味なんて知らないはずだ。何度抱いても新鮮なそれは今もその体を欲している。いつだって可愛すぎてすぐ達してしまいそうになる。
行為に及ぶときは必ず彼女のキスから始まった。大人しそうに見える名前は、物欲しそうに俺を見つめて、唇を重ねてくる。彼女が俺を嫌いになるはずがない。
相思相愛のはずだ。
それなのになんだろうか。この体の中に残る不安は。何かよからぬことが起こる前触れなのだろうか。
気持ちが悪い。
暫く彼女に会っていない。
前は少なくとも一週間に3回は会っていた。調子がいいときは毎日会っていた。
ちゃんといつも彼女は笑ってた。
だから大丈夫だと思ってついつい酷いことを言ってしまった記憶はある。本当は誰よりもかわいいと思っているのに、誰よりも大切にしたいのに、自分の気持ちを彼女に素直に伝えることができない。
自分がとてもめんどくさい人間だという自覚はあるが、いつだってそんな俺のことを見捨てず笑って許してくれていた彼女に甘えていたのかもしれない。
でもちゃんと一途に向き合ってきたつもりだ。今更彼女以外は目にも入らない。
会いたい。
ただその感情が俺の心を支配する。会って抱きしめて、肌の温もりを感じたい。
今度こそ自分の気持ちをちゃんと伝えたい。
俺にはお前しかいないんだって。俺はお前が世界で一番好きなんだって。