似てるのかもしれない
新学期三日目にも関わらず、隣の席で寝ているのは遙君。これからはこの人としばらく隣になるんだから、少しは仲良くなりたいとは思う。
少なくとも相手に仲良くなる気がないのは確かである。これではいつまでたっても仲良くはなれない、そう思っていろいろ話しかけてみるものの、曖昧な返事しかない。
ただ気だるそうに適当な相槌を返すだけ。
それでも辛抱強く耐えていた、私を褒めて欲しい。いつか、報われる日がくると思っている。仲良くなる前にウザがられるかもしれないけど。
クラスにまずまず馴染めた私と、未だに一人ぼっちの遙君。遙君に話しかける人といったら私と、同じクラスの橘君くらいだ。遙君と橘君が話している内容を聞くと、水泳のことらしかった。水泳といったら授業くらいでしかやらないので、よくわからないのだけど。
その話をしている時だけ、微妙に表情が明るくなる。泳ぐことが好きな人なのかもしれない。この学校には水泳部がなくて残念だけど。
今は、ちょうど4時間目が終わってまたもやお弁当の時間だ。今日の遙君は、ずっと外を見ていた。別に私は断じてストーカーではない。たまたま視野に入るだけだ。
お弁当を食べる前に次の時間の準備をしておこうと、リュックから教科書、ペンケースを取り出していじっていると、ころんと消しゴムが床に落ちて転がってしまった。
やってしまった、と思いながら席を立って拾おうとしたら、私が取るのよりも早く消しゴムをかがんで取る人影ができた。私の目線は消しゴム一直線だったので、誰だろうと視線を上にあげてみると隣の席の遙君だった。さっきまで席に座っていた彼が、私が落とした消しゴムを差し出した。
「…ん。」
『あ、ありがとう』
すると遥君がかすかに笑った。何がおかしかったのか分からないけど、珍しいものを見れた。そして消しゴムを手渡してくれて、少しだけ驚いたのと、笑顔発見の嬉しさで一瞬思考が停止してしまった。
「なんでそんな顔してるんだ」
『う、ううん!なんでもない!』
首をブルブルして全力で否定した。遙君のかすかな笑いを見てたことが嬉しかったなんて本人の前で言える訳がない。
「ハルー、屋上に行こう」
「…じゃあ。」
大男さんに呼ばれた遙君はクールに去っていった。
今の出来事が夢のようだった。
「苗字さん、七瀬くんと話せるんだー!」
『…えっ?あ、うん。』
「すごいね!」
華ちゃんの明るい声がした。話せるというか…なんというか。
狡いかもしれないけど、今はそういうことにしておこう。そう言われてちょっと嬉しかったことは心の中にしまっておくことにしよう。
それにしても、あの遙君がわざわざ消しゴムを取ってくれるなんて…。きっと立ったついでだったんだよ!そうじゃなきゃあんなことしてくれるはずが無い!
…それとも、ただ無口なだけで本当はいい人なのかもしれない。そうだ、ただの人見知りなんだ。だったらもっともっと仲良くなれば、いっぱい話ができるのかな?
遙君と仲良くなることは難しいと思うけど、何故か仲良くなるために頑張ってみようと思った。きっと、一人ぼっちだった時の私にそっくりだから放っておけなかったのかもしれない。一人ぼっちが寂しいこと、私は十分に知っているから。
そう思うと、自分って随分と損をする性格だったんだなと改めて感じた。そんなことを気づけなかったものだから、高校一年生からやり直したいと思う。中学校の頃はまずまず友達はいたから良かったけどね…。
(ハルが女の子と話してるなんて珍しいね)
(そうか?)