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『凛君、雰囲気変わった、よね?』
「俺も思った、なんていうか…鋭くなった?」

凛君のいなくなったスイミングクラブに、私たちの声だけが木霊する。私が小さくつぶやくと、続くようにマコが少し寂しげに言った。

『…だよね』

もしかしたら、凛君の雰囲気が変わったのではなくて、それは凛君がだんだんと大人になっている証拠なのかもしれない。成長と一緒に性格が変わっていくのはよくある話だと思う。


記憶の片隅にいる凛君は明るくて人懐こい子だった。鋭い八重歯を見せて笑う顔が今でも鮮明に覚えている。少年らしい、そして誰からも好かれるような人だった。


それが今はどうだろうか。体型も、性格もスッカリ変わって大人びた様子だ。あの頃からすると想像もつかないような変わり様。もしかして私は凛君の偽物を見たんじゃないだろうかと思うほどに、小さい頃からの差異が激しい。誰かが、今見た彼は実は双子の弟だと説明してくれたのだったら、納得がいく。しかし、兄弟は彼の妹だけだったはずだ。


小さい頃からちっとも変わっていない私が置いてけぼりにされたみたい。

周りのみんながものすごいスピードで変わっていく。人間は変わっていく生き物だと聞くが、それは正しそうだ。


少しも寂しくないと言ったら嘘になる。寧ろすっごく虚しい。心に違和感ばかりが残る。


ハルは凛君が手放した思い出のトロフィーを無言で拾った。そのトロフィーは少し錆びていて、以前のような輝きはなくなっていた。どんな形になろうと、私には思い出の塊だということには変わりない。


凛君はあの時リレーの記憶なんて残っていないのだろうか。優勝した時あんなに嬉しそうだったのに…。
嬉しがっていたのは私たちだけ?ううん、絶対凛君も喜んでた。あのメンバーの中で1番喜んでいたように見えた。


「大丈夫だよ、名前」


私の心の中にある不安な感情を読みとったのか、マコは優しく頭を撫でてくれた。この手にはいつも助けられる。もしかしたらマコには溢れんばかりの母性があるんじゃないだろうか。私は、まだ不安な気持ちを抱きつつも、一度心を整理することにした。

「…家に帰るぞ」
『……え』

急に手を引っ張られたかと思えば、それはハルだった。余裕の1文字も垣間見えないハルの表情は何処と無く辛そうだ。

そんなハルにかける言葉が見つからない。無理に言葉を発しても余計傷つけるだけだ。私が引き寄せられるままに、ハルについて行く。流石は男の子、歩幅も大きければ歩くスピードも早い。彼は普通に歩いているつもりかもしれないが、私は小走りである。

ハルが握る手は不安を抱えているのが分かる。どうして私を引っ張るんだろう。ハルが今考えていることが全く分からない。

ただ、今日の様子を見て分かった事がある。


ハルと凛君の間には見えない確執があると。

私が知らない間に何かあったのだろうか。しかし、真相を聞くことができるような雰囲気ではない。私はただ、何も言わずにハルに付いていくことしかできなかった。