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「夢…か」
「いや、夢じゃないから!」


いっそ夢だったらどんなに気持ちが楽になるだろうか。ハルはきっと昨日スイミングスクールに忍び込んだ時の夢を見たのだろう。でもそれは夢じゃないんだよ。


「でも……ほんと何だったんだろう?凛ちゃんおかしかったよ」
「そっくりさん」


そうか、やっぱりあれはそっくりさんだったのか…。ってあれは紛れもない凛君だったじゃないか!私が見間違えるはずがない。

「そっくりさんが何でハルに勝負持ちかけるのさー?」

その通りだ、絶対あれは本物だった。

「なら幽霊」
「足、あったよ?」
「じゃあドッペルゲンガー」
「あ、それ懐かしい。スイミングで流行ったよね。超絶合体ドッペルゲンッ…」
『ガー!』

マコと同じポーズをとったらハルに冷たい目で見られた。ドッペルゲンガー流行ったでしょ!ハルってば、本当水以外興味がないね。

***

「お前達なぁ、たとえ廃墟でも無断で中に入るのは不法侵入なんだ!わかってるのか!?」

私達は職員室で説教をくらっていた。肝心のハルは不在のまま。ラッキーボーイめ!!

ガミガミと話す男の先生の声が頭に響く。職員室なんだからもっと声を抑えてくれないかなぁ。なんて上から目線の事なんて、今の状況で到底言えるわけがない。

先生の説教を聞いたふりをしながら、昨日の出来事を整理してみた。

まず私達はもう少しで取り壊しになってしまうスイミングクラブへ、最後に一目見たいという思いと、トロフィーを掘るために行った。

そこで遭遇したのはオーストラリアに留学しに行ったはずの凛君。
そして、何故か私達が掘る予定だったトロフィーを携えて。あれは凛君だったのに凛君じゃなかった。

考えてみれば、昨日の凛君の行動は不可解なものばかりだった。


「まぁまぁ先生その辺で」


考え事をしていると、天使の一声が。
ハルとマコのクラスの担任であるあまちゃん先生こと天方先生だ。
まだ若いのにしっかりした教師だし、なんといっても可愛い。守ってあげたくなるようなフワフワとした人だ。


天方先生が助け舟を出してくれたお陰でなんとか説教は長引かずにすんだ。こういう時のハルの気まぐれはズルいよな…。なんでここにいないんだよぅ。
一緒に怒られれば良かったのに!あ、でも私たちが無理やりハルを連れて行ったようなものだし、今回は仕方がないか。

天方先生の一言もあり、私達は無事に職員室を脱出する事ができました。

『マコ〜、渚君〜、疲れたね』

出た瞬間、早速愚痴を始める。ガミガミ先生に聞こえないようにもちろん小声でだ。

「あんなに怒らなくてもいいのにね!」
『うんうん!』

本当にその通りだ。確かに不法侵入してしまったのは認めるとしよう。しかし、かつて通っていたスイミングスクールであり、思い出の地でもあるのだから、慈悲の心で目を瞑って欲しいものだ。

『そう言えば、昨日凛君がいたってことはこの学校に転校してきたって事なのかな?』
「……言われてみれば」
「じゃあさ、下駄箱で松岡って名前があるか確認してみようよ!」

説教が終わった私達は、ハル探しのついでに下駄箱の松岡の名前を探す。

「松岡、松岡…。」
『次は、松本…、ありゃ違う』


さっきから惜しい所まではきてるけど…、松坂、…違うな…。
二年生の下駄箱のゾーンにないってことはやっぱり凛君は転校はしてきてないんだ。ちょっと残念なような。


「あ!あったぁ!」
「ほんと!?」


渚君の声が聞こえてきたのは一年生の下駄箱のゾーンだった。凛君は私と同い年なはずだけど…。


「…待って、松岡…江?どこかで、…思い出した!あの子凛の妹の松岡江だ!」
『コウちゃん!岩鳶高校に入学してきたんだ…!』


コウちゃんとの出会いはまだ小学生だった頃。水泳の大会で知り合った。あの頃は大会がある度にコウちゃんと観戦してたな〜。たしか、一緒に凛君を応援したよね。

あの最後の大会以来会ってないけど、どのくらい成長したんだろう。きっと凄く可愛くなっているんだろう。もともと美少女だったから、今はきっととんでもないことになっているに違いない。

あぁ、なんだか会いたくなってきた。


「あ、そうだ。俺、ハルに届け物のプリントがあるんだけど一緒に行かない?」
『ハイ!行きます!』

「僕も、僕も〜〜!」


というわけで結局、最後まで見つからなかったハルの家に向かったわけですが、ハルの家の前には女の子の姿が。あの姿は、…あの髪の色は…。

『コウちゃん…久しぶりーー!』

なりふり構わずに特徴的なの赤い髪に抱きついた。暫く会っていないのに、すごく懐かしく親近感がわく。

「わわっ、え、名前ちゃん…!?」
『そう、そう!コウちゃんったらスッカリ可愛くなって…!』
「名前ちゃんこそ…、ってあんまり変わってない?」

『え、やっぱり?この前凛君にも言われたよ変わってないって』


詳しく言えば進歩してないと言われたのだけど。しかも私に直接言ったわけでもないけど。自分では十分に大人になったつもりでも、周りの人から見たらそこまで変化はないのかもしれない。コウちゃんは着実に大人になっているっていうのにちょっと悔しい…!


「やっぱり、お兄ちゃんに会ったんだね…」

コウちゃんはこの前私達が凛君に会ったことを知っていたかのように話す。


コウちゃんは凛君に関して何か知っているということ…?