鮫柄学園についた私たちは、誰かに見つからないように侵入し、プールのある場所を探し当てた。プールは外ではなく中にある施設らしい。水泳をするにはうってつけの環境である。
「ほらほら、ペース落ちてんぞ!」
中を覗くと、熱血系の男性が部員に怒鳴っていた。ひぇ〜、怖い。見ているだけで思わず顔が引き攣る。
と言ってもさすが強豪校。練習に対しての熱の入れ方が全く違う。
それに、やはり強豪校と言うこともあり設備がとても揃っている。
「凛ちゃんいる?」
「いないなぁ……休みなのかも……」
必死に練習する部員の中には、探し求めていた凛君の姿はなかった。あれ、今日は休みなのかな?
「ねぇ、ハル…」
口をぽかんと開けたマコがハルの方をみると、外でまだ明るいにも関わらず制服を脱いでいるハルがいた。
「うわあぁ!ってここで脱いじゃだめだから!」
「泳げるからって連れて来たの真琴だろ!」
『泳ぎたいのは分かるよ!』
「まあまあハルちゃんっ。練習終わって人がいなくなってから泳ごうよ、ねっ」
渚君の宥め方がまた可愛い。いや〜、それにしてもハルはいい筋肉ですな。最近見てないけど、マコの筋肉のつき方も中々のものだ。って私は変態か…!
しゃがんでハルが脱ぎ捨てた服を拾って、パンパンと汚れを叩いた。
まったく、いつからこんな水大好き人間になったの?……そうだ、ハルは小さい頃からずっと水が大好きだった。気づいた頃から水と一緒だったね。
『ハルは本当に水が好きだね』
「……、悪いか」
『ううん、泳いでるハルが好きだよ』
「……泳いでる時だけか」
少しの沈黙の後、そう聞いてきたハルはとても真剣な顔をしていた。
『私はどんなハルも大好き!』
「……。」
『なにその呆れた目は!』
「……別に」
鮫柄の水泳部の練習を見ていたらあっという間に日が落ちた。さっきまでプールにいた生徒達は流石にもういない。"不法侵入二度目の私たちに怖いものなんてない!"と自慢げに言ったらマコにギュっと頬を引っ張られた。ちょっと痛かったけど少しは加減をしてくれたみたいだ。
そしてようやくプールの中に入る。広い、広いぞ!
『ねぇ、このプール設備、すごいね!!綺麗だし広〜い!』
「…やっぱりマズイ気がする……って、ああっ!」
マコはまだ不法侵入したことを悩んでいる。やってしまったことはもう取り返しがつかないんだよ。かく言う私は開き直りすぎだが。
すると、突然水しぶきがあがった。
これは他の誰でもない、ハルだ。既に下に水着を着用していたから裸ではない。それにしてもハルは脱ぐのが早すぎだ。早脱ぎ選手権の上位は間違いなしだろう。
無残に脱ぎ捨てられた制服を、畳んでハルの泳ぎを堪能する。
相変わらず綺麗に泳ぐな……。こんなに伸び伸びしたハルを見たのはいつ振りだろう
「マコちゃん、僕たちも泳ごうよ!」
「だめっ、見つかるとマズイって!それより凛を探さないと!」
『見つからないよ、きっと!』
「その根拠のない自信はどこから……?」
マコはもう諦めモードにはいっている。ヤンチャな人を友人に持つと大変なんだなぁ。勿論私も含めてだ。
「その前に明かりをつけなきゃ大丈夫だよ」
渚君は、言いながら制服を脱いでいく。ちょっと待って、渚君って水着を着てきてるの…?
「水着はどうするつもり…」
「裸でいいんじゃない?」
『は、は、ははは裸はマズイィィィ!』
反射的に身をかがめて目を両手で覆う。渚君ってば裸はまずいって。仮にも私、女の子です。ここに女の子がいます!!
「あーいきゃんスーイムッ!」
渚君は気まぐれと言ったらいいのか、なんて言ったらいいのか。水が好きだってことは小さい頃から変わらない。ザバーンと音が出るくらい豪快に入水した彼はもうすがすがしい。
ずっと視界が真っ暗なままもやだなと思いながら水の音を聞く。
すると、マコが私を後ろからヒョイっと抱き上げた。
突然の出来事に目を開けそうになるけど、渚君は裸…、渚君は裸…。と念仏のように唱えて必死に目を閉じた。
「名前はこっち」
そう言ってプールとは反対を向かされた。同時にマコを視線が絡み合う。
『マコは、泳がないの?』
「俺はいいよ。名前といる」
ニコっと笑った顔に私にも笑顔が綻ぶ。マコはとても優しい人だ。