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___ガチャッ。


和やかな雰囲気で泳いでいると、音を立てて突然開いた扉。

バレた、とうとうバレてしまったぁぁ!どうしようどうしようとオドオドしているとマコの目は見開かれている。もしかして怖そうな先生!?声も出ないほど、動けないほど強烈な先生が来たんだろうか。

今までとても和やかだったから、ここが他校だということを失念していた。


「お前ら…、どういうつもりだ」


現れたのは怖い先生でもなく白ラン姿の凛君。
私達が一日中探し求めていた人物だ。こんなタイミングで現れるなんて、やっぱり運命なのだろうか。

「凛!」
「僕たち、凛ちゃんに会いに…」
「帰れ!」


凛君が突き放すように言い放つ。その瞳には優しさなど片隅にもない。冷たい。心が何処にあるか分からない、そういった瞳だった。あんなにも輝いていた笑顔はもう何処にもない。成長したから仕方がないとはよく言ったものであるが、凛君の場合はそんな次元じゃない。もはや根本から変わってしまったような、そんな様子だ。


すると、陸上の異変に気づいたのか、それまでプールで気持ち良さそうに水に浮かんでいたハルが水面から顔を出す。あぁ、気づいてしまうのね。本当は、私は心のどこかで凛君とハルを会わせてはいけないと思っていたのかもしれない。今となってはもう遅い話だが。


「…フリー」

「は?」

「言っただろ。俺はフリーしか泳がないって」


水を背景にして雫を滴らせるハル。ゆっくりと、プールから上がる。
そして凛君の前に立ちはだかる。対峙する二人の様子を見る私達は、不安と心配で揺れ動いていた。


今ならまだ止められる。

「あの時の景色、もう一度見せてくれ。何が見えたか、忘れちまったから」


ハルの一言で止める気なんてなくなってしまった。
だって今の表情……、とても生き生きとしているから。

水を得た魚というわけではないが、この場の主役は間違いなくハルだ。

「…あぁ。見せてやるよ。…ただし、あの時と同じ景色じゃねぇ!もっと違う景色だ!」


睨み合う二人には稲妻が走る。
ハルの挑発にのった凛君の表情は、今までにないくらいの自信に満ち溢れていた。

「相変わらず何考えてんだかわからねぇヤツだぜ、お前は」
「…どうでもいい。さっさと準備しろよ」


凛君の言葉を聞くよりも、早く泳ぎたい様子のハル。
それぞれのレーンに、ハル、凛君が並ぶ。


小学校以来の勝負。勝敗なんて気にしないくらい楽しそうに泳いでいた。
でも今は違う。紛れもない真剣勝負。凛君は、雰囲気もそうだが、一段と目つきがギラリと鋭い。

「真琴、スタートの合図頼む」
「……分かった」

合図を頼まれたマコは浮かない表情。しかし2人の戦いに口は出せないと思ったのだろう。文句一つを言わずに、2人と向き合う。3人の視線が、今ようやく交差する。…その雰囲気は私が求めていたものではなかったけど。


「勝負は100m。種目はフリーだ」

準備が整った二人に凛君が出した条件。種目はハルの得意なフリー。同時にフリーは凛君の得意種目の一つでもある。

準備ができたことを確認して、マコは合図を出した。

そして、マコの合図で2人は一斉にプールへ飛び込んだ。


「すごい!キック力は凛ちゃんが勝ってる!」
「いや…、ストロークのスピードはハルの方が上!」

陸にいるのに、私まで水の中にいるように息が止まる。ひとかきひとかきがスローモーションのように見える。私は二人から目が離せなかった。

どちらが勝つか分からないこの勝負を固唾を飲んで見守っていた。