15




「ばっかもーん!お前たちは反省する気はあるのか!」


翌日の放課後。

またこの前のように職員室で怒鳴られる。
今回ばかりはハルも一緒だ。先生が大きい声を出す度、周りの先生からの視線が痛いし頭に響く。これは先生方に問題児扱いされるのは目に見えている。

えぇ、反省はしています。

「…すみません」

「廃墟の次は他所の学校のプールに無断で侵入とはどういうことだ!

まったく、向こうの先生が大ごとにはしないと言ってくれてるからいいものの……」


大きなため息をついて項垂れる先生。前回も今回も自分たちが悪いのは承知の上。こんなに怒られるなら今度からは不法侵入は辞めよう。でも、ちょっと冒険みたいで楽しかったなんて思うのは不謹慎だ。慎もう。渚君あたりは同じことを考えてくれている気がする。


「まぁまぁまぁ、先生そのへんで…。ほら、こんな名言もあります!」


天方先生…!華麗に舞い降りた先生の登場によって場は和やかになる。私の心も穏やかになってきた。

「古代中国、周の時代の軍師、太公望が、金魚鉢をひっくり返して……」
「金魚は、嫌いですが」
「……しゅみましぇん。」


天方先生の説得はバッサリと切られてしまった。が、そのおかげもあってか説教の呪縛からようやく解放された。

「あまちゃん先生、いまいち助けにならなかったねー」
『天方先生が助けてくれなきゃもっと説教長引いてたかもよ?』


天方先生の助け舟は大いに助かった。天方先生のおかげで説教していた怖い先生もちょっと怖くなくなったもん。さすが私の中の天使だ。大天使アマエルの称号を授けたい。


「でも、結局金魚はどうなっちゃったんだろう?」
「え、マコちゃんそこ?」
『気になる、気になる!』

説教した先生が天方先生の話を途中で遮ったため、最後まで聞く事ができなかった。後で先生に直撃してみよう。

「ハル、知って……あれ!?」

マコと一緒に振り向くと、そこにハルの姿はなかった。職員室から一緒に来たハズだったのに。と言ったらハルの行く場所は決まっている。もうあそこしかない。


「ハルちゃんなら……ねえ」

そう言って渚君が指した方向には、いつの間にか荷物を纏めて帰路についていたハルだ。行き先は勿論、家のお風呂である。

「いつの間に……」
『さすがハル。自分が好きなことに関しては行動が早い…!』

普段からこんなやる気を見せて欲しい。


この距離ではもう追いつかない。ハルの水好きには困ったものだ。ただ好きなだけならまだしも、周りの人間に迷惑を及ぼすような真似はして欲しくない。そうならないように見守る役目を背負っていたのはいつからだったろう。

マコと一緒にハルを見守ってきた。本当、私達がいないと何も出来ないんだから。

その逆も言える。私だって、ハルとマコがいない人生なんてつまらない。貴方たちがいるから世界が色づいて見えるのだ。貴方たちが私にとってどれほど大切か知らないでしょう。

私の気持ちはきっと彼らに届かないかもしれないけど、それでいい。彼らが幸せになってくれるのならそれでいいんだ。

私はあっという間に帰ってしまったハルの背中を、見えなくなるまで見守った。


「あ、江ちゃん!」

すると、渚君が発した言葉には昨日会ったばかりの人物の名前が。声の方向をみると廊下の奥から歩いてきたコウちゃんだった。

「だから江じゃなくてコウって呼んで!」
「どっちでもよくない?」

女の子からしたらどっちでも良くない問題だったりして。


「よくない! コウ!」
「江」
「コーウ!!」

「江」
「コーーウ!!!!」

「コウ」
「ゴウ!っしまったぁ〜〜」


どこぞのコントのようにテンポがいい。コウちゃんはやってしまったと言わんばかりに頭を抱えている。そんな微笑ましい光景にマコと二人で笑った。妹と弟がいたらこんな感じなのかな。