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時は夏が近い季節。春ともいえない、夏ともいえない微妙な時期である。

それでもじめっとした、嫌になるくらいの暑さで項垂れていると、それに反してハイテンションな渚君がなにやら紙を持って屋上にきた。


『それは、えっと……?』
「部活の申請用紙ゲットしてきましたー!!」

「仕事が早いねぇ」

昨日話したばかりの事なのに、既に実行しているとは…。渚君は恐るべし有言実行の鏡だ。昔から渚君は一度やると決めたら信念は曲げない子だった。なんだかんだ言って一番しっかりしているのかもしれない。


「こういうのは思い立ったらすぐにやらないと!えーっと、設立の目的は『水泳を通して心身を鍛え、学校生活をより豊なものに』」

「しかも意外とそつがない」
『いいね、いいね!さすが渚君!』
「えへへー」

渚君が可愛く笑う。今日も可愛いな。任せきりにして大丈夫だろうか。私にも何か出来ることはないだろうか。

「部長はやっぱりマコちゃんだよね」
「いや……そこはハルだろう?一番速いし」
「速さは関係ないよ〜、向き不向きってあるじゃない?」

『「ハルが部長……」』


ないな、と苦笑した。ハルに対して失礼な発言だったかもしれないけど、当の本人はまったく聞いていなかったようだ。ハルは何食わぬ顔でご飯を一口。マコは何を想像したのか「ないな……」と苦笑して呟いた。部長はもっとこう、威厳がある感じで、みんなを引っ張ってくれる人が向いているのだろう。そう考えると、ハルよりも適任なのはマコだ。


『ハルって部長のキャラじゃないよね。ここはやっぱりマコが部長、かな?』
「じゃあ、部長はマコちゃんで、ハルちゃんは副部長、ってことで」
「おい、勝手に話を……」


話を全く聞いていないかのように思われたハルが反応を示した。え、副部長も嫌なの?確かに昔から面倒なことは率先してやる人じゃなかったからね。ただ、順当に考えればそういう役割を振られるのは当たり前である。

「まあまあ!副部長って言うのはだいたい名前だけでやることないから安心して」
「その言い方は全国の副部長さん達に失礼だ」

『副部長さんごめんなさーーい!』
「本当に謝るの!?」

マコの的確なツッコミ。突っ込まれる側としては心地が良い。私はボケ気質があるのかもしれない。ボケかツッコミかと問われれば確実にボケだと胸をはって言える。胸を張っていいことでは決してないが。

「会計は僕で、名前ちゃんはマネね!」
『了解!』

ピシッと敬礼のように手を頭に持ってきて構えた。私にもちゃんと役割があるなんて。みんなと一緒だという事が嬉しくて、ついニヤけてしまう。

「……残りは、顧問の先生!」

いままではスムーズに決まってきたけど、こればかりはどうにもならない。どなたかにお願いするほかないだろう。

「どうするんだ?」
「あまちゃんに頼めないかな、って思って」
「あまちゃん先生?」

「クラスの友達から、すごい噂聞いちゃったんだ〜」

凄い噂とな?すごく気になるけど、この件は何やら凄い噂を知っているという渚君に任せた方がいいのだろう。

今回の収穫は、ハルがどことなく水泳部の設立に賛成なことだ。そう、完全に彼は水につられたのだ。結局、いつだって彼を動かす源は水だ。私はいつになっても水には勝てないのかもしれない。……悔しい!

でも、ハルが心地よさそうに泳いでいる姿を見るだけで、…それだけで満足する私もいることは紛れもない事実である。