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マコと渚君にすべてを任せていたら、いつの間にか事は進んでいて、水泳部の顧問は天方先生が決まった。あんなに可愛い先生が顧問なんて、他校の人は放っておかないだろう。天方先生が襲われないために、私がしっかりボディーガードをせねば…!いや、私なんぞの非力な力では守りきれないかもしれない。来る日のために鍛えておかなければ。

しかし、渚君は天方先生にどんな秘策とやらを使ったのだろうか。凄いとしかいいようがない。……さすがだ。渚君には弱みを握られないようにしないと。って私脅されるほどの弱み持ってないな。今後も弱みを作らなければいいのね!


と、そう言えば本格的に泳ぐ前にしなければいけないことがあるらしい。あるらしいというより確定事項だけど。
それは、

『プ、プール清掃、………ですか?』
「えぇ、そうよ」

にこやかに微笑む天方先生。私達は今後の絶望で、先生のようににこやかな表情をしていられない。

目の前に広がる光景は、緑が生い茂り、所々ヒビが入ってとにかくプールと呼ぶには程遠い状態の場所だった。ここを掃除するって、相当な時間と労力を費やす事になるのでは!?しかし、この難関を乗り越えなければ始められるものも始められない。

考えていることはハルもマコも同じらしく、二人は顔を引きつらせて後ずさりをする。分かる、分かるよ。私も気がひけるもの。

「ダメだよ、逃げちゃ」
「何でもやる、って言ったわよね!」

裏のあるあまちゃん先生と渚君の表情にゾクリと鳥肌がたつ。お、恐ろしや…!


結局しばらくの間、放課後はプールの補修作業になった。暑い中、雑草を抜いては捨てて抜いては捨てての繰り返し。一向に作業が終了する兆しを見せない。このままでは本格的な時期に間に合わなそうだ。気合いだ!気合を入れないと!


皆は、ある一日だけホームセンターで、必要な道具を買いに行ったらしい。らしいとは、私は行っていないからだ。あまちゃん先生の車は運転席も合わせて4人乗りなわけで、その日ちょうど家庭の事情があったので3人に行ってもらった。

あとから話を聞くと、水槽らしきものを発見したハルが店内にも関わらず、服を脱ぎ出してそこに入ろうとしたらしい。ハルらしいと言えばハルらしいが、もっと公共の場という事を考えるべきだ。


『ハルー!ちょっとお願いが…』
「なんだ」


時は再び雑草抜きに戻っていた。
私のそばには、抜きたくても頑丈で抜けない大きな雑草が一つ。それをハルに抜いてもらおうと言う魂胆だ。

『この雑草、どうしても抜けないんだけど…。抜いてくれない?』
「やってみる」


短く返事をしたハルは早速雑草を抜きにかかる。ちょっと抜ける気配があったけど、未だに抜けない。そうだ、一人が駄目なら二人で抜けばいいのだ。と単純な考えを思いついた私はハルに加勢する。


『…ん、んー!』

おっ、あとちょっと力を入れれば抜けそうだ。私は力を振り絞って後ろに体重をかけた。

すると雑草が宙を舞った。
抜けた、と思った頃には私の体は後ろに倒れている。その状況はハルも同じだった。

同時に倒れ込むと、抜いてあった雑草がクッションとなった。丁度いい位置にあって良かった。

そして、横向きで倒れこんだハルと目があった。大きな青い瞳がいつにまして青かった。この状態が可笑しくてフッと笑うと、ハルは微妙ながらも少し微笑んだ。

「立てるか?」

さすがは男の子。

起き上がるのが身軽で、ハルは立って私に手を差し伸べている。私はその手をとってお礼を言った。

『ありがとう』
「髪に雑草がついてるぞ」
『え、本当に?どこどこ?』
「ここ」

ハルは私の頭に手を伸ばして、ついていたらしい緑の雑草を取り除いてくれた。

「早く続きやるぞ」
『うん』

ハルの目下の目標はとりあえず泳ぐこと。それを遂行すべく黙々と作業するハルの様子を見て感嘆せざるを得ない。……素晴らしい!

ハルがすこしずつ、ハルらしさを取り戻しているような気がした。