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先日、正式にコウちゃんがマネージャーになってくれた。それが確定した瞬間、私は心の中で思いきりガッツポーズをした。


さて、水泳部設立のためにはもう重大な一つ条件があった。それは部員の募集だ。最低部員は4人はいなければいけないというルールに従わなければいけないのだ。部員と言ってもマネージャーはカウントされない。マネージャーである私とコウちゃんは4人のうちには入れないらしい。確かに部員3人に対して、マネが2人は余りにも多すぎる。


とっくに仮入部期間なんか過ぎていて、既に部活には所属している人が大半だろう。部の成立が他と比べて一足遅かったから仕方がないことだ。

そこで、まだ部活に所属していない人を勧誘するため、美術室を借りて勧誘ポスターを描くことになった。

主に渚君やハルがポスターを作成していたけど、ここでは渚君の独創的なアイディアは避けておきたい。

反対に、ハルのポスターは何かの絵画かと見間違えるほどに綺麗で完成度が高いものだった。それは海が見える崖に天使が舞い降りてきている芸術作品だった。ハルはもともと芸術家タイプだもんね。手先器用だし……と思っていたら、美術部の部員さん達がハルの絵を見て感動して、ハルを入部させようと引っ張って行こうとした。

『ハル、行かないで〜!』

そして美術部員とハルの取り合いになる。私はハルの片腕を必死に引っ張る。

「ねぇ、マコちゃん。ハルちゃん嬉しそう…」
「ははは、そうだね……」


いろいろ考えていても時間ばかりがすぎて行くわけで。一生懸命勧誘しても入部をしてくれない人がほとんどだ。理由は様々だけど既に部活に入っているからという理由が一番多い。

渚君は何故か既に部活に入ってしまっている男の子を勧誘し続けている。諦めないなぁ渚君は。それでも水泳部に入部してくれる気配がない。どうしてその子にこだわるんだろうか。

『あとは部員だけいれば部活ができるのにね…』
「こうなったら最後の手段!あまちゃん先生に一肌脱いでもらおうよぉ!」
「一肌って?」
「顧問があまちゃんだっていうのを、もっとアピールして、水泳部に入れば水着が見放題!って……」
「なるほど、文字通り一肌……」

渚君の提案に、マコが少し呆れつつ納得しそうになったその時。

「あーなーたーたーちぃー?」

いつの間にか入口にいた天方先生が、思わず竦んでしまいそうになるほどの威圧感を出して立っていた。普段優しい人が怒ると怖いというのはあながち嘘ではないらしい。

「ひぃぃ!」
『ぎゃあ!』

「それやったら私顧問降りるからね。もうぜっっったいに水着にはならない、って決めてるんだから! いーい?わかったかしら?」
「「はい…」」

マコと渚君は今までにない程怯んでいる。天方先生は絶対に怒らせてはいけないと思った瞬間だった。

こんな感じで部員に飢えていると、私よりできたマネージャーであるコウちゃんから発表があった。

「本日は皆さんに良いお知らせがあります!」

トーンの高い声に引き寄せられてコウちゃんの元に集まった。良いお知らせってなんだろう、ドキドキと胸が高鳴る。

「なんと、鮫柄との合同練習を取り付けてきました!」


次々と驚きの声が上がる中、私は一人言葉にならない感情が頭を駆け巡っていた。鮫柄といったら凛君がいる。ついこの前再会したばかりの人だ。小さい頃から彼を知っている私にとっては、この前の彼は別人のように感じた。変わってしまった大切な人に会うことを素直に喜べない自分が何処かにいる。


「ひょっとして、凛に頼んだの?」

「お兄ちゃんに頼んでも聞いてくれないので、ここはストレートに部長さんにお願いしてきました!」


ドンっと鼻高らかに言ったコウちゃん。
かなり凄いことですよね、それって!だ、だってさ、無名の高校に全国クラスの超強豪校が相手をしてくれるなんて。もしかしてだけど、鮫柄の部長さんてコウちゃんに気があるんじゃ…?

それは困る。私の可愛いコウちゃんが人にとられる所なんて見たくないもの。 私がなんとしても死守します!

「っていうことは、あの鮫柄の屋内プールで今度は堂々と泳げるのかぁ」
「あ…ただし、合同練習と言うからには最低4人必要だって言われちゃいました…」
「さすが敏腕マネージャー江ちゃ」

「コウね」

やはりまだコウちゃんはゴウと呼ばれることに納得していないらしい。互いに譲れないところがあるみたい。でも、この二人の絡みは面白いからずっと見ていたい。喧嘩をするほどなんとやら、とも言うし、決して仲が悪いわけではないのが分かる。


「それじゃあ当日までになんとしてもあと1人入部して貰わないと、せっかく江ちゃんが色仕掛けで取り付けてくれたんだもん」
『い、色仕掛け……!?』

私には一生できそうもない高度な技だ。 自分が色仕掛けをしているところが想像できない。

「んな!名前ちゃん違う、色仕掛けじゃない!!」
『え?』
「当たり前でしょ!」

そうだったら、お姉さんびっくりです!違って良かった…、切実に。