少し大きくなった私たちは、オーストラリアに行った凛君以外同じ中学校に進学していた。
予想通り水泳部に入部したハルとマコ。この二人の泳ぎをまた見ることができるんだなと思うと嬉しくなった。
その反面、二人の隣に凛君がいれば揃うのにな。なんてことを考えてしまう自分がいた。一人でも欠けては欲しくなかった。そんなことを思う私は欲張りだろうか。もちろん、各々には別々の人生があって、誰1人として同じはなくて。だから、離れ離れになってしまうのは仕方がないことだ。
でも、心が成熟していない私たちは、凛君が欠けたことに少し心細さを感じていた。マコは何度か凛君の心配をしていたけど、ハルの口からは凛の"り"の字もなかった。ハルもああやって振舞っていて、凛君がいないことに1人で悲しがっているのだろう。長年見てきたから言わなくても分かる。
寂しいよ、凛君。
もう一度会いたいよ。
あなたがどんな境遇で過ごしているのか分からない。きっと慣れない環境と戦っている。
今、あなたは同じ空を見上げてるのでしょうか。
あなたの見ている空は、私たちの空と同じくらい青く澄んでいるのでしょうか。
到底返事が帰ってくるハズもなく、ただ無意味に石を蹴った。凛君が帰ってきたら、またあの時みたいな泳ぎを見ることができるのかな?
みんなで臨んだ最後のリレー、体が痺れる程の感覚を覚えた。
優勝だと決まった時のあの笑顔がずっと忘れられない。純粋で、輝く目をした彼らの感動を今でも鮮明に覚えている。
同じ場所にいた私が泣きそうになるくらいカッコ良かった。
ハル、マコ、凛君の三人だから心から好きになれた。あの三人じゃなきゃ駄目なのに。…きっと彼らじゃなきゃあの時の景色を見せてくれない。
特に当事者というわけでもなかった私を魅了させた泳ぎ。
好きだった。
今でも大好きだ。
水泳が大好きな三人の表情が大好きだった。
ハルの素直に笑えないぎこちない表情も、マコの優しく全てを包むような微笑みも、凛君のくしゃっと笑った無邪気な笑顔も、忘れられないまま胸の中に残っている。
こんな風にいつまで経っても過去にすがりつく私は、あの頃から何も変わっていない。変化を望まないなんて、どうかしている。この世に変わらないものなんてないんだ。だけど私は、心のどこかで変わることを恐れていた。
反対に凛君は、前を向いて変わろうとしている。そんな事を考えて、実行できる凛君がすごく羨ましかった。