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桜がヒラヒラと舞い落ちる季節。
待ち遠しかった春がもう私たちの町へやってきていた。

今日は2年生の一学期の始業式。すでに登校している生徒たちがちらほらと見受けられる。

登校日初日ともあって、心なしか皆の歩速は速い。みんな新学期が楽しみなのかな。
そんな私も、新しい出会いがあるかもしれないこの春が楽しみで仕方が無い。

そういえば今日は一番楽しみにしてるクラス発表があったな。仲がいい子と一緒のクラスだといいんだけど。


去年はハルとマコは同じクラスだったのに私だけ違うクラスだった。かなり心細かった事を昨日のことのように鮮明に覚えている。思えば中学の時だって私だけクラスが違った。運が悪いのかなぁ。

だから今年こそはハルとマコと同じクラスがいいなという願望を込めて祈っていると頭をポンっと撫でられた。


こんなことする大きい手は彼しかいない。いつだって私の心の癒しだ。


『おはよう、マコ』
「おはよ、名前。」


頭を撫でたのは紛れもないマコだった。む、見ないうちにマコまた大っきくなった?

いつのまにか更に成長してしまっている成長期途中の彼をムッと睨む。小さい頃は同じくらいの身長だった私たちも、今は見上げないと顔が確認できないくらいに大きくなっている。男と女の差なんて所詮その程度なのだ。中学校の時まではまだそんなに身長差もなかった。まぁ、確かにその時からマコは頭一つ分くらい大きかったかもしれない。
声だってこんなに落ち着いたものじゃなかった。すこし少年らしさを残したあどけない声は、声変りをしたことによってすっかり変わってしまった。だけど優しい性格だけはずっと変わってない。

『マコ、また身長大きくなったね。身長分けて』


せっかく綺麗なマコの制服をクシャッと握りながらせがんでいると、マコはまた私の頭の上に手を置いた。


「俺は、今のままの名前がいいな」

サラリと胸キュンな言葉を言った。その笑顔は太陽に照らされていつもより眩しかった。

こんなことを普通の女の子が言われたらドストライクだろう。私は慣れているのでこれがスキンシップにしか過ぎないと分かっている。

でも流石に今のはキたなー。こういうのは慣れているはずなのに、思わずキュンキュンしてしまう。

成長期に差し掛かったハルもマコもどんどん大きくなっていってどんどんカッコ良くなっていく。ハルは美青年に、マコは爽やかイケメンに。まさしく大人の階段を登っている途中だ。私なんて中学の時からおいてけぼりだ。

私は一年で何段の大人の階段を登っているのだろうか。
この間、小学校以来久しぶりにあった友達に、

「名前は全然変わってないね」


と言われたらばかりだから大人の階段なんて全然登れてないだろう。自分で言って悔しくなってきた。私は大人になるために少しは背伸びした方がいいのかな?

でも今は、今はゆっくりと青春を楽しもう。焦っていてはゆっくりと景色を見ることができない。重要な景色を見逃してしまう可能性だってある。

学校までの道のりをマコと話しているとあっという間に学校に到着した。

学校ではある一点に人だかりが出来ていた。言わずもがな、クラス表を貼っている掲示板の前だろう。私も早くクラス表をみたいとマコを急かしてそこに向かった。マコは呆れながら笑っていた。よく落ち着きがないと言われるが、まさしくここら辺が子供っぽい所以だろう。

さて、来たはいいけど私の身長ではこの人だかりを越えることは出来ない。頭の中で一生懸命策を練っているとふわりと体が中に浮いた。


何事だと思っていとっさに足を床に伸ばすけど、それは虚しく宙をきった。

「これで見える?」

私を抱き上げてくれたのはマコで、マコは身長が高いので、同時に目線がグンと高くなり、余裕でクラス表を見ることができた。ありがたや。


クラス表を見えるのはいいけど、問題点がある。それは周りの視線を集めてしまうこと。
周りからどう見ても、この身長差は親子だろう。これ以上高い場所にいるのは恥ずかしいのでさっさと見てしまおう。

まず始めに私の名前を探した。えっと、苗字、苗字、苗字…………、あった。

次はハルかマコの名前を探そう。

えーっと、橘、七瀬は…、…!今年も違うクラスか……。


そう、また違うクラスだった。唯一の救いはクラスが隣だったこと。休み時間とか暇な時すぐに遊びにいけるし、体育の合同授業の時は同じではないか。まだいつもよりはマシと言えよう。

ここは前向きに考えてみよう。


『ありがとう、マコ。見終わった』
「それで、どうだった?」
『今年もまた私だけ違うクラスだったよ〜!』

うぅ、と泣き真似をしながらマコを見ると、柔らかく撫でてくれた。

「大丈夫だって、俺だってハルだって名前に会いにいくから」
『本当?でも、ハルは面倒くさがって来なそうだけどね』
「……それは絶対にない」
『えー、だってあのハルだよ』
「はは」

やんわりと笑顔でスルーされたけどこれ以上問うのは無粋だと思って辞めにした。そうだ、どんなに嘆いたって結果は変わらないんだ。

さて、今年も頑張るぞ!ってあれ?

『マコ、マコ』
「ん?」
『ハルは?』
「あ、あぁ、そう言えば今日は来ないのかな?」

あら、新学期早々学校に来ないなんて不良道まっしぐらではないか。なんで肝心なハルの事気づかなかったんだろう。

明日からは何が何でもハルを引っ張り出して来よう。

そして、私達の高校2年生生活が始まった。