「えー、まじ?」
「だから、まじだって」
教室内では様々な会話が聞こえてくる。昨日見たテレビ番組の話、好きな俳優の話、今日の昼ごはんの話。いろいろな会話が飛び交う中で、私は彼の声を鮮明に聞き取っていた。
同じクラスの女の子数人と、堅治君を含めた男の子2人で話している。
面白くない。
私以外の女の子と話しているところなんて見たくなかった。私は一人で口を尖らせながら、チラチラとそちらを見る。そして、何度か見ていると、堅治君がこちらをがっつりと見ていることに気づいた。
私は急に焦って、姿勢を正す。
すると彼は立ち上がり、迷うことなく私の方に向かって歩いてきた。
「何」
決してトゲトゲしい言い方ではなく、どこかからかっているような口調だ。
『ううん、なんでもない』
「嘘つけ」
そういって勢いよく頬を掴まれる。タコみたいな口になっている私を見て、笑うのを我慢しているようだった。私は抵抗を試みて、掴んでいる手を必死に引きはがした。
『あの子たちと仲いいんだなって』
「あー、まぁ化学んとき同じ班だし」
『そっか。良かったね』
「は?何それだけ?」
『うん、それだけ』
本当にそれだけだ。まさか大っぴらに嫉妬してましたなんて言えるわけがない。仲がいいことを咎める理由はないが、あまりにも親しくされると気分がよくない。本命の彼女でもないのに、そんな嫉妬させるような事やめてほしいなんて言えないし、言う資格もない。
「言いたいことあるなら言えよ」
『言ったら堅治君の気分悪くなっちゃうかも』
「べつになんねーよ。言われねぇことのほうが気持ち悪い」
はっきりとした性格の堅治君は白黒をつけたがる。
『羨ましいなぁって』
「は?」
『堅治君と仲いいの羨ましいなって、思っただけだから』
尻すぼみになる声。自信を持って言えるようなことではない。あの子たちと仲良くしないで、ということを言ってしまったら多分嫌われてしまう。心の狭い女だとは思われたくない。
「なにそれ。…それって嫉妬じゃねーの」
『違うよ!嫉妬じゃ、ない…と思う』
これは嫉妬だ。でもそれを頑なに認めたくない。認めてしまったら負けだ。私は彼の顔をっ見ることができなくて、Yシャツのボタンの二つ目あたりを見る。
「まじかよ…」
『嫌な気分にさせちゃったらごめん』
「嫌だったらこんな喜ばねーわ、バーカ」
覚悟を決めて彼の顔を確認しようと思って見上げると、とても不機嫌そうに廊下の方向を見ていた。
喜んでいる?あまりそうは見えないんだけど。ただ、少し口元がニヤけているようにも見える。
嫌じゃなかったってことでいいんだよね。
そう問う勇気がなかったので、ただ一人悶々としていた。
(あの二人さ、ラブラブすぎね?)
(完全に周り見えてねぇな)