俺は今日飲む分のスポドリを買い忘れていたことに気づき、売店へと足を進めていた。その途中で、名前を発見したので、話しかけようと思って近寄るが、どうやら先客がいるらしい。隣の隣のクラスの奴と二人で外に向かう姿を見て、胸がざわついた。何か嫌な予感がする。

本来の予定をそっちのけで静かに二人の後をつけることにした。

場所は俺たちが初めて話したあの裏庭だった。ここには死角が沢山あるため、隠れるにはうってつけだ。どこか探偵になったような気分で二人の会話を聞く。

「苗字さん、俺、ずっと君の事いいなって思ってたんだ。もしよければ付き合ってくれないかな」

話の内容は大方予想がついていたが、まさか本当にそうだとは。

「君が二口と付き合ってるのは知ってるよ、でも二口なんかよりも俺の方が君を満足させてあげられるよ」


会話は途切れ途切れだが微かに聞こえてくる。俺という仮の彼氏がいながらも告られている名前はよっぽど男にモテるらしい。工業高校では圧倒的に男の数が多いため、女子という存在はとても貴重であり、どんな見てくれをしていようと、もてはやされることが多い。そんな中で、容姿が整っている名前の存在は更に貴重である。

男の餌食になってしまうのも仕方がないが、普通彼氏がいるやつに告白してくるか?俺はこの時点でこの男がとても気に食わなくなっていた。

『私、堅治君じゃないと満足できません』

男が苦手なあいつからしたら考えられないような凛とした声だった。一切の迷いもない。

『何かに一生懸命で、ちょっと意地悪だけど、とっても優しいんです。

多分、これから先、堅治君以外の人は好きになれないです。だから、お気持ちは嬉しいんですけど、ごめんなさい。』

どうやら俺が出る幕はないらしい。おどおどしている名前はそこにはいなかった。顔は見えないが、きっと堂々としているのだろう。俺は体中の力が抜けて、その場にうずくまった。そして、手で顔を覆う。

「…ズリィだろ」

あんな風に言われて好きになるなと言われるのは無理がある。この前この気持ちを自覚したばかりだったのに、これ以上好きにさせるとか本当ズリィよ…。

フリとはいえ、あんなにも熱烈に自分のいいところを語られて、冷静でいられる男がいたら見てみたい。しかも、それを言った奴が、自分の好きな女子だったらなおさらだ。

いっそ名前が好きだと言ってしまおうか。言ってしまえば今の状態ではいられなくなるだろうか。考えても考えても答えは出ない。

ただ分かっていること、それは俺がどうしようもなく名前が好きなことだけだった。

-どうしようもない好き

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