体育館に響く拍手と、カメラのシャッター音。
花束を抱えたクリス先輩の姿に
なまえは胸が詰まって、なかなか声をかけられなかった。
人の波が引いたあと、グラウンド脇でようやく二人きりになる。
冬の頃と同じように白い息が漂っていたけれど、今日はその空気すら特別だった。
「……卒業、おめでとうございます」
差し出した花束に、先輩は少しだけ笑みを浮かべる。
「ありがとう。……やっと一区切り、かな」
沈黙の間に、遠くから吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
その音に背中を押されるように、なまえは聞いた。
「大学でも……野球、続けるんですよね」
「続けるさ。もっと上を目指したい」
その瞳は、怪我をする前よりもずっと強く輝いていた。
そして、ふいに視線をこちらに向け——
「なまえ。お前のこと、ちゃんと応援してる。これからも」
その言葉は、想像していたよりも甘く、深く、胸に響いた。
驚いて何も返せないでいると、先輩はスマホを取り出して差し出す。
「……連絡先、交換しよう。試合結果とか、練習のこと、また話したい」
指が触れ合った瞬間、冬の寒さなんて消えてしまった。
別れ際、先輩は少しだけ顔を近づけ、耳元で囁く。
「努力してる姿、俺はちゃんと見てる」
その声が、卒業式の日の思い出として永遠に焼き付いた。