「俺だけ見ててね」

「……終わったね」
人の少なくなった校舎。
制服姿なまえが、少しだけ大人びて見える。
「明日からいないとか、実感ないんだけど」
壁にもたれて、目は合わせない。
いつも通りのテンション。
でも、指先だけ落ち着かない。

「別に、止めないよ」
あっさり。
「行きたいとこ行けばいいし」
一拍。
「でもさ」
やっと視線が上がる。
まっすぐ。
「俺だけ見ててね」

冗談みたいに軽い声。
でも、目は本気。
「遠く行っても、俺のこと一番にして」
一歩近づく。
「他のやつにとられたら、普通にムカつくし」
小さく息を吐く。
「俺、なまえ先輩のこと好きだから」
さらっと言う。
逃げ道、なし。

「だから」
ほんの少しだけ、眉が寄る。
「ちゃんと俺選んで」
制服の袖を、軽く掴む。
「待つからさ」
静かに笑う。
「ちゃんと帰ってきて」

静かな告白。
少しの沈黙のあと、なまえが吹き出す。
「何それ、ズルすぎ」
笑いながら言う声。
その瞬間。
国見の目が、ほんの少し丸くなる。
「……は?」
一拍遅れて、ふっと笑う。

「なにそれ」
肩をすくめる。
「俺、結構真面目に言ったんだけど」
でも口元はちゃんと緩んでる。
「ズルいのはそっちでしょ」
一歩近づく。
「そんな顔で笑われたら、余裕なくなる」
目が優しくなる。

「断られなくてよかった」
ぽつり。
小さく本音。
「……俺、強くないからさ」
でもすぐいつもの顔。
「ちゃんと俺だけ見ててね」
指先でなまえの手を掴む。
今度は迷いなく。

「約束」
少し照れたみたいに視線を逸らして、
「破ったら迎えに行く」
冗談みたいに言うけど、半分本気。
最後にもう一度、なまえを見る。
「卒業おめでと」
優しく笑う。
「俺のなまえ先輩」