大会を目前に控えた夕方。
二軍の練習後、誰もいないベンチでタオルを畳んでいると、
御幸の声が聞こえた。
「先輩、俺……本気で勝ちたいっす」
なまえは思わず足を止める。
ベンチの反対側で、クリス先輩が黙って彼の言葉を聞いていた。
そして短く、「わかった」とだけ返す。
御幸が立ち去った後、なまえは静かに近づいた。
「……聞いていたのか」
「声が大きかったから……」
ペットボトルを受け取る手は、今日は震えていなかった。
「俺はまだ、諦めてない」
短い言葉なのに、真っ直ぐな瞳がすべてを語っていた。
告白じゃない。
でも、なまえには十分すぎる答えだった。
試合の日。
ベンチで水を差し出すと、
クリス先輩は一瞬だけ目を細めて受け取る。
その視線が、誰にも見えない約束のように温かかった。