あの日以来、倉持と話すたびに――どうしても、あの夕暮れの距離感を思い出す。
向こうも、どこかよそよそしい。
練習試合の休憩時間。
給水のためにベンチ裏へ回ったなまえは、ペットボトルを手にしたまま立ち止まった。
「……おつかれ」
後ろから声。
振り返れば、バットを肩に乗せた倉持が、少し息を弾ませて立っていた。
「倉持くんも、おつかれ」
自然に笑ったつもりなのに、彼は一瞬、視線をそらす。
「……この前のさ」
倉持が言いかけて、口を閉じる。
沈黙が落ちる。蝉の声がやけにうるさい。
「な、なに?」
問いかけると、倉持は少しだけ歩み寄った。
ベンチの影で、二人の間の距離がまた詰まる。
「……ああいうの、気にすんの?」
低くて、掠れた声。
心臓が痛いくらいに鳴る。
「……気に、するよ」
それだけ答えると、倉持の眉がわずかに動く。
だけど――その時、部員の誰かの声が響いた。
「倉持ー! 次いくぞ!」
「……あとで」
短くそう告げて、倉持は振り返らずにグラウンドへ走っていった。
ベンチの影には、置き去りにされた熱だけが残っていた。