話したい、ふたりで


木漏れ日が優しく揺れる公園。
二人きりの空間は、放課後のざわめきから切り離された、静かな時間だった。

水戸は少し落ち着かない様子で、視線を優に向ける。
「……あのさ、今日、どうしても話したくて」

優は小さく息を吸って、少しだけ肩をすくめる。
「……うん。わかった」
(やっぱり、断れない……でも会えてよかった)

歩きながら、言葉を探す水戸。
「その……休みの日に、目が合ったよな?」
「……うん。」
「何で目、逸らしたか……聞いてもいい?」
「女の子が、隣にいたから……彼女だろうなって思った。私が声かけてってしたら、私が彼女だったら絶対嫌だから……」
「そうか……」
「感じ悪くてごめんなさい」

水戸は立ち止まり、真剣な眼差しで優を見た。
「……あれ、彼女じゃねぇよ」

その言葉に、優は思わず目を瞬かせる。
「え……?」

「バイト先の同僚だ。ただの友達。……勘違いさせたなら、悪かった」
水戸の声は低いけれど、妙に必死で。

優はふるふると首を横に振る。
「わ、私こそ……勝手に思い込んで……」
耳まで真っ赤になって、俯いてしまう。

水戸は小さく息を吐き、ぽつりと付け足した。
「……正直、お前が他の男と笑って話してんの見て、俺も……面白くなかった」

優の目が丸くなる。
「え……?」

水戸は言葉を区切りながら、それでもはっきりと伝えた。
「……俺が気にしてんのは、その女じゃねぇ。
 ……優のことだよ」

心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
優は信じられない思いで水戸を見つめる。

「……私、の……?」

「そう。……だから勘違いしてほしくなかった」
言い終えた水戸は耳まで赤くして、視線を逸らす。

胸の奥が熱くなって、言葉がうまく出てこない。
ただ――「嫌じゃない」。
その気持ちだけは、はっきりしていた。

優は小さな声で、それでも勇気を振り絞って答えた。
「……私も……洋平くんに、勘違いしてほしくなかった」

その瞬間、ふたりの間の空気がやわらかく変わる。
木漏れ日の下で、ほんの少しだけ近づいた肩と肩。
触れそうで触れない距離が、逆に甘くて、胸を締めつけた。

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