湘北での偶然の再会


入学して数週間。
この日も体育館からは、バスケットボールの弾む音とシューズの擦れる音が響いていた。
吸い寄せられるように出入口へ足を運ぶと、同じように立ち止まって中を覗いている二人の姿があった。

ひとりは、大きな瞳をきらきらさせた女の子。
こちらに気づくと、ぱっと花が咲くように笑った。

「赤星優さん、ですよね?!」

突然名前を呼ばれ、優は驚いて瞬きをする。
「そうですけど……」

「やっぱり!」
彼女は嬉しそうに声を弾ませた。
「私、赤木晴子です。中学の大会で見かけたことあって、ずっと話してみたかったの!」

その真っ直ぐな瞳に、優の心は一瞬で和らぐ。
こんなに素直で人懐っこい子に声をかけられたのは初めてだった。

――その隣から、低い声が割り込んだ。

「……あれ。あんた、前に和光中に来てただろ?」

振り向くと、水戸洋平が立っていた。
制服姿のまま腕を組み、少し眉をひそめている。
無造作に放たれたその一言に、胸の奥が不意に跳ねる。

「……はい。そうです」

そう答えると、洋平はしばしじっと優を見つめた。
それから、ふと片眉を上げる。

「名前は?」

「えっ?」
「名字しか知らねーし。……名前」

思わず息をのんで、けれど逃げ場のないような眼差しに吸い込まれて――小さく答えた。
「……優です」

「ふーん。優、ね」

その瞬間。
体育館から響くボールの音よりも、自分の鼓動の方が大きく聞こえる気がした。
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