◇14
このあと合流したクラピカも一緒に、ゴンが辿るレオリオのオーデコロンの匂いを頼りに本隊を追いかけた。
やがて生い茂る木々が途切れ、視界が開ける。こじんまりとした広場にはぽつんと一棟、建物が佇んでいてすでに到着している受験者達がその周りを囲んでいた。どうやら二次試験には間に合ったみたいだ。
「ヒソカとレオリオは……」
ヒソカに連れられたレオリオを探しながら待機している受験者の中を歩いていると、急にゴンが後ろを振り返った。視線の先には……ヒソカだ。人影に紛れたヒソカがこちらに無言で手招きをしている。不気味な笑みを浮かべた彼が指さす先には、木陰に寄りかかって座るレオリオの姿があった。
「レオリオ大丈夫?」
3人で駆け寄りレオリオに声をかける。レオリオは少し前に意識を取り戻したみたいだけど、ヌメーレ湿原での記憶はすっかり抜け落ちているらしい。
「ダイジョーブダイジョーブ」
カラッとした返事に反して、レオリオの右頬は大きく腫れ上がり痛々しい。ヒソカに殴りかかって返り討ちに遭ったとゴンから聞いたから、その時の傷だろうけど。
「言わない方が……いいな」
「うん」
わざわざ本人に言う必要ないよね。ゴンとクラピカと目配せし、黙っていることにした。
「なんだお前ら、コソコソと」
「んーん。あ、そうだレオリオ」
ゴンと軽く目を合わせてから私は腕を伸ばした。
「これ、あげる」
レオリオに差し出したのはおともの体に付いていたあの葉っぱだ。
「これは?」
「薬草。すりつぶして塗ると腫れにすっごく効くの!」
すると私の説明を聞いたレオリオはポカンとした顔から一転、怪訝な表情へと変わった。
「いや塗るったって……」
「やってあげよっか?まずこーやって手で揉んでから……」
「いやいやいーいーいーいー!!」
さっきまで受け答えもぼんやりとしていたのに、急にカッと身を乗り出し私の手を押し返してきたレオリオは
「悪いが気持ちだけ受け取っとくよ。薬なら一通り持ってきてるしな」
と、言いながらよれたシャツにいそいそと袖を通し始めた。
「ねーレオリオ。これ、くじら島にも生えててオレも知ってるけどよく効くよ?」
「だよねぇ〜ゴン!私もどっかぶつけた時はいっつもこれ!」
ゴンもフォローしてくれて二人で申開きをするけれど、レオリオは無視。レオリオが無言で開けたカバンの中から、つんとした薬品の匂いが漂ってきた。
錠剤を取り出して飲み込むレオリオに、私は信じられない思いで食い下がった。
「ねね、それ飲むだけでホントに効くの?これより?」
「ったりめーだろ。なまえちゃんてもしかしてあれか?"自然派思考"の?レントゲンとか拒否るタイプ?」
ジロリと私を睨む視線からは、私への「胡散臭い」という気持ちが隠しきれていない。
「なっ……人をNGLみたいな言い方するのやめてよ!せっかく心配してあげてるのに!」
別にヘンに凝り固まった思想を持っているわけじゃない。大きな事故や病気ならいざ知らず、ちょっとしたケガや風邪には山にあるもので十分事足りるし、私の家だと港町へ薬を買いに行くより山で採る方が早かっただけ。
そう言ってもレオリオは「似たようなもんだろ」とさらに疑いの目を向けてきた。
「医者の卵として忠告するが、ゴンも……なまえも、ケガや病気には素直に『医薬品』を使うことをおすすめするね」
レオリオはそう言って眉間に皺を寄せたまま立ち上がった。