◇22
それにしても。
「どーしてもっと余裕持ってゴールできなかったかなー。残りあと30秒だよ?!危なっかしいったらありゃしない!」
トリックタワーから乗り込んだ飛行船は、見知らぬ次の目的地へ向かって高度を上げてゆく。
備え付けのホットコーヒーを飲んで一息つくと、温められたおよそ60時間分の鬱憤が少しずつ雪崩を起こし始めた。
「ちょっとレオリオ!聞いてんの?!」
隣に座って同じようにコーヒーをすするレオリオは煩わしそうにカップを置くと、固いソファーの背もたれに片手をついて私と視線を合わせた。
「色々あったんだよこちとら!だいたいなあ、元はと言えばお前が勝手にいなくなるのが悪いんだろ?!」
無遠慮に額を人差し指で押され、カチンときた私はあまり余分のないレオリオのほっぺたを指で引っ張った。
「なにそれ!私のせいだって言いたいわけ?」
「ああそーだ!お前が一人で隠し扉に転げ落ちたせいでオレ達はあんな疫病神と行動する羽目になっちまったんだからなぁ!ったく、道中どれだけ苦労したか……」
「私だってすーっごく大変だったんだから!なんかいきなりハゲと組まされるしさ!」
しばし無言でにらみ合うも、レオリオは意外にもすっと身を引いて頭を掻いた。
「もうよそうぜ。なまえ」
ぽつりと零れ落ちた一言には疲労の色が滲んでいる。当然だ。感情のまま当たり散らした目の前の相手は、72時間かけた試験がさっき終わったところなのだ。
ハッとして私も前のめりになった体を元に戻した。みんな揃って三次試験を通過できた。今はそれを素直に称え合うべきだ。
「ごめん。なかなか……みんなが来なかったからその、ずっと心配だったの」
「オレも、あ」
間延びした声が急に上擦って、レオリオはわざとらしく咳払いをした。
「あー……オレもお前も、無事でよかったな!」
差し出されたレオリオの両手に、ちょっと遅れて手を重ねる。パチン!と乾いた音がして、手のひらが熱くなった。
「次は一緒に組もうぜ、なまえ」
「うん!」
ハイタッチの余韻が残ったまま私はにっこり笑って、テーブルの下の左脚を、隣の脚に当てた。
「ではせんせ。次に向けて再診をお願いできますか?」
大先生のお小言と引き換えに包帯が取れた後は、おかわりのコーヒーをお供に、予定よりすこしだけ二人で夜更かしをした。