◇30

1次試験は持久力。2次試験は洞察力。3次試験は精神力、軍艦島では協調性を。
そして4次試験は、それらの総合力を試された。
以上を踏まえて、まだ試されていない次の……最終試験の科目とは。
「ハンターとして必要な知識の数々。即ち、ペーパーテスト!!」
ボドロさんの高らかな声を聞いて、一気に血の気が引いていくのが分かった。

レオリオしか見つけられなくて嘆いていたのがウソみたいに4次試験はあの後ピンチの連続だった。
レオリオがトンパさんと愉快なお友達からプレートを奪われそうになったり、ヒソカと出くわして2点分のプレートをくれないか、なんて言われたり、洞穴でレオリオがヘビに噛まれてしまったり、さらにそのヘビのせいで洞穴に閉じ込められそうになったり……こう思い返すとピンチだったのはほとんど私じゃなくてレオリオだった気もするけど、とにかく後で合流したクラピカ、ゴンと協力してどうにか全員6点分のプレートを持ち帰ることができた。
試験中会えなかったキルアもスタート地点に戻ると当然って顔で立っていて。まああまり心配はしてなかったけど改めてホッとしたし、誰も欠けることなくここまでこれたのは素直にとても嬉しかった。

そして今は3日後に行われる最終試験の地である、ハンター委員会が運営するホテルへ向かう飛行船の中。
次がついに最終試験。
みんなで揃って合格したいけど、まだ知らされていない試験内容を推察した結果、最有力候補がペーパーテスト!ということで、もしこれが本当なら今のところ一番合格が危ういのは私かもしれない。

「まさか最終試験が筆記とはなぁ」
「レオリオはいいじゃん。お医者さん志望なんだから勉強だって得意でしょ?それに比べて私は……」
腹ごしらえのために飛行船の中にある食堂へ立ち寄った私とレオリオ。ご飯はおいしいのに、試験のことを考えるとどうにも気が重い。
「はぁ〜、食欲なくなってきた」
力なく置いたフォークがお皿の上でカランと乾いた音を立てる。背もたれに体を預けた私を見て、向かいのレオリオはもの言いたげに眉をひそめた。
「そんだけ食ったら十分だろ」
「うるさい」
ぼーっと見上げた天井と、天井に取り付けられた蛍光灯が目に映る。その白っぽい視界から昔使っていた白い毛糸の筆箱を思い出し、いやーな記憶が一緒に蘇ってきた。
「私、ばーちゃんに言われて通信学校の勉強は一応したけど、早く仕事を手伝いたかったからずっと辞めたいって言っててさ。その度に『きちんと学問を修めないといつか困る時が来る』って叱られてたんだよね」
「ばーさんが正しかったな」
「本当だよぉ〜!!こんなことならちゃんと言うこと聞いて勉強しとけばよかったぁぁ〜っ!!」
物知りなクラピカやお医者さん志望のレオリオはペーパーテストでも合格できるだろう。キルアもお金持ちの家の子だから意外と教養がありそうだし、ゴンは……あんまり勉強得意ではなさそうだけど、野生のカンでどうにかしちゃいそうな雰囲気がある。それに……。
最終試験を受ける他9人の顔を順々に思い浮かべると、なんだかんだ全員頭がいいような気がしてきた。私だけ不合格だったらどうしよう。そんなの絶対いやだ〜!!
頭を抱えながら、そこでふとペーパーテストの合格条件について考えた。
「でもペーパーテストならさ。みんないい点数取れば全員合格できるかもしれないよね?」
視線を前方に戻すと、レオリオは飲んでいたお水のコップを置いて背もたれに片ひじを乗せた。
「まあ、合格ラインが設けられているなら全員その点以上取れば合格だろうし、上位何人が合格……でも極論全員満点とりゃあ合格できるだろうな。難しいとは思うが」
「勝敗のある試験内容なら絶対不合格者が出ちゃうから、それなら筆記でよかったのかも。せっかくここまできたんだしみんなで合格したいもん!私達だけじゃなくって、残りみんなでね」
試験は合格の椅子取りゲーム。だから受験者はみんなライバル。と思って駆け抜けてきたハンター試験だけど。それでも時には力を合わせて通過してきたみんなのことをたまたま同じ船に乗り合わせただけの赤の他人とはもう思えない。
「4次試験ではオレからプレート取ろうとしてたくせによ」
「そっちだって3次試験で仲間蹴落としても合格するとか言ってたんでしょ?キルアが言ってた。お互い様じゃない!」
ムッとした顔で睨みあったけど、おかしくなってお互いすぐに笑いがこみ上げてきた。

レオリオはお皿に残った食事をかきこみ、コップの水を一気に飲み干した。そしてデザートのさくらんぼを一本つまんで、私の目の前にぶら下げた。
「よっしゃ、さっさと図書室に戻って予習再開だ!なまえ!」
「おーっ!!」
身を乗り出し、さくらんぼにかぶりついて立ち上がる。
過ぎたことをいつまでもクヨクヨしたってどうにもならない。今やるべきことをやるしかないんだ。つまり勉強!勉強勉強!



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